NY発の大注目企業GroundTruthはAI×位置情報で新たなマーケティング手法を編み出した!

「ground truth」という一般用語がある。地上で見たままの立体的な風景を意味し、人工衛星から撮影された地上の写真と区別される。

GroundTruthは、このground truthのコンセプトをデジタル・マーケティングの世界に持ち込んだ。インターネット上でやり取りされるユーザーIDやメールアドレスなどは、いわば「仮想の位置情報」だが、ground truthは「地理的なリアルの位置情報」だ。
ユーザーのリアルな位置情報を把握しながら、企業はより効果的なマーケティングを展開できる。この「ground truthとデジタル・マーケティングを合体させたもの」はジオ・マーケティングの一種といえる。

ロケーション・テクノロジーで世界をリードするGroundTruthのサービス、ビジネスモデル、活用事例を紹介する。リアルの世界でユーザー行動を把握すると、マーケティングの可能性がさらに拡大することが分かるだろう。

GroundTruthとは?

2009年、NYでGroundTruthを設立した創業者は「場所の力」を強く信じていた。
GroundTruthは、Blueprintsという独自の特許技術で、人々の行動をマッピングすることに成功した。そして、その情報をマーケティングに活用するのが、GroundTruthの狙いだ。
2019年現在、21カ国でサービスを提供し、月間アクティブユーザーは1億9,000万人に達するという。

GroundTruthの拠点は6カ国14都市にあり、従業員は約300人。主な顧客にトヨタ、アメリカ赤十字社、Timberland、BMW、ロクシタン、マクドナルドなどがある。
2018年にはI-COMのデータクリエイティビティ・アワードを受賞し、CRAIN’Sの急成長企業50選にも選出された。

テクノロジー

GroundTruthの特徴は、大きく3つ。

1.正確な位置を把握

位置や地理をマーケティングに活用するジオ・マーケティングは、スマホやタブレットなど、デバイスを使う人たちの現在地を正確に把握しないことには始まらない。
GroundTruthのアプリを搭載したスマホを使うユーザーの位置情報は、プラットフォームに送られる。GroundTruthは独自の特許技術で、位置情報のタイムラインを作り、現地の天候情報も記録していく。

2.位置情報と場所をマッチング

GroundTruthは、ユーザーの位置情報をリアルの世界に当てはめるために、Blueprintsという特許技術を開発した。これにより、世界の1億カ所以上の施設や店、住宅、公園などとユーザーの位置情報を紐付けることができる。ユーザーが「何をしているか」を高い確度で推測できるのだ。

例えばユーザーが自宅を出てショッピングモールの駐車場に到着したこと、モール内の入店した店まで詳細に分かる。小売店は、ユーザーの買い物行動に合わせてスマホに買い物情報やクーポン券を送信できる。

Blueprints(GroundTruthホームページより抜粋)

3.エリアごとの詳細な分析

さらにNeighborhoodという技術を使って、エリアごとの詳細な分析を行うこともできる。例えば、ある住宅街に住む人の平均年収や行動範囲、エリア内の店への訪問頻度、最もポピュラーなスポットなどを把握することができる
企業のマーケターにとって、どれほど魅力的な情報かは想像に難くない。

ソリューション

これらの技術から、どのようなマーケティング・ソリューションが期待できるのだろう。

来店頻度を高め、売上増を達成

GroundTruthから得られる情報は、様々なマーケティングシーンで活用できる。

例えば、GroundTruthが保有する膨大なユーザーデータの中から「過去90日以内にこの店を訪れた人」や「似たライフスタイルを好む人」を抽出できる。
さらに、Audience Managerという機能を使って位置情報と行動情報、購入履歴を組み合わせられるので、より詳細なセグメント設定ができる。

キャンペーンのコンセプトも作りやすくなるだろう。「刺さる」キャンペーンは、企業とユーザーのつながりをより強固なものにするはずだ。

(GroundTruth社ホームページより抜粋)

正確で詳細なGroundTruthのデータは、リアルタイムでユーザーに働きかけることができる。例えば、小売店の半径5キロ以内にいるユーザーに対してプッシュ通知を送信する、といったことも可能だ。加えて天気、湿度、紫外線指数といった天候に合わせたコンテンツをユーザーのスマホに送信することもできる

かつ、分析機能と統計機能も優れている
自社製品と競合との売り上げを比較できるマーケットシェア分析、実店舗を訪れた人数と行動を分析する徒歩トラフィック分析、リピーター客が他によく訪れる場所の分析などを、ローカルにも、グローバルにも実行することができる。

位置情報を収入源にすることも

大量に顧客の位置情報を入手している企業は、GroundTruthと「データ・パートナー」契約を結ぶことで、顧客の位置情報をGroundTruthに売却することができる。
この契約は、位置情報のクオリティが高いほど報酬が上がる仕組みになっている。

効果的な広告配信

Ads Manager機能を使って、位置情報に基づいた広告を配信することができる。この機能の優れた点は、自社の店舗の近くにいる人たちに対してだけでなく、競合店の近くにいる人にも広告を配信できるところだ。

さらにAIを使ってユーザーの行動を分析し、それに合わせた広告を配信することもできる。例えば、レストランで食事をした後に、必ずバーに立ち寄る習慣があるユーザーがいるとするなら、レストランに入った時に、バーの広告が送信される。

Ads Managerは、位置情報を活用した広告作成プラットフォームといえる。すでにFortuneの世界トップ企業100の約半数がAds Managerを導入しており、トップ10の中でも7社が採用している。

ケーススタディ

GroundTruthのサービスを活用している企業の事例を見ていこう。

アメリカ・トヨタ

アメリカ・トヨタは、GroundTruthを使ってユーザーをディーラーに誘導する実験を、デラウェア、ペンシルベニア、ニュージャージーの3州で行った。
車の購入を検討していると思われる人をピックアップし、広告を配信した。その結果、1カ月で訪問者数が1,200人増え、総合販売店でもトヨタブースへの来店も増加した。

Timberland

アウトドアシューズブランドのTimberlandは、定番のブーツ以外の広告キャンペーンを、GroundTruthのシステムを使って展開した。
AIで位置データを分析し、最適なユーザーに広告を送信。広告はバナー形式や全画面表示のものなど、複数を用意した。さらにNY旅行が当たるキャンペーンも実施した。その結果、イギリスでの来店が25%増、ドイツでは16%増となった。

このキャンペーンは、MoMAの「位置情報を活用したサービス」の最優秀賞に選ばれた。

料金システム

GroundTruthはクラウドで提供され、料金は月定額システム。

広告プラットフォームはCPV(Cost per Visit)を採用。広告を見て来店した人数に応じて使用料を支払う。
CPM(Cost per Mille)がオンラインでの視聴回数で料金を設定しているのに対し、CPVではオフラインのアクション、リアル店舗への来店数に重点を置いている。
リアルの世界をメイン市場に据えているGroundTruthならではの料金システムだ。

まとめ

顧客データの分析がマーケティングにおいて重要な位置を占めるようになったのは、ほんの数年前のことだ。だが現在、デジタルデバイスから顧客情報を収集して分析するプラットフォームが数えきれないほど存在する。

その中でユーザーの「オフラインの状態」に注目したGroundTruthには、先見の明があるといえる。
位置情報を分析することで個人の生活サイクルや嗜好が明らかになり、同じような行動パターンを持つ人をグループ化する。これをジオ・マーケティングにつなげることが、GroundTruthが目指すところだ。

オンラインストアではなく、リアルの世界における実店舗への来店をゴールに置いたプラットフォームは非常に珍しい。オンラインを使ってオフラインを活性化させるGroundTruthの取り組みは、パイオニアと言っていいだろう。

<参考>