AIが人の「感情」からコピーを生成――NY発AIスタートアップPersado社

AIによるコピーライティング技術を提供するNY発のベンチャー企業「Persado」を紹介する。人の心理と感情を分析し、「クリックしたくなる」メッセージを作成する最新技術とはどのようなものかを概説する。

Webマーケティングにおいて重要なもののひとつとして「キャッチコピー」がある。効果的なキャッチコピーは、サイトへのアクセス数を高めるだけでなく、消費者の購入意欲を促進したり、リピーターを育てたりする効果を発揮する。目にした人が思わずクリックしたくなるようなコピーを作り出そうと、マーケティング担当者は日々頭をひねっていることだろう。

しかしこれからは、AIがコピーライティングをする時代になるかもしれない。NY発のベンチャー企業Persadoの急成長は、そんな未来が近いことを物語っている。Persadoは2012年に設立したのち、MicrosoftやExpedia、American Expressといった大企業をカスタマーとし、10億ドル以上の収益アップを実現させた。

この記事ではPersadoが誇る自然言語処理と機械学習の技術を紹介する。AIだからこそできるコピーライティングの強みを見ていこう。

Persadoとはどんな企業か?

Persado概要

Persadoは2012年12月12日に設立されたNYのベンチャースタートアップ企業である。2019年現在では世界7つ以上の都市に200名を超える従業員を抱えており、これまでの資金調達額は30億ドル以上となっている。

Persadoが強みにしているのは、特定の言葉に対する消費者の反応を自動で分析し、コンバージョン率を最大限にするためのコピーを作成するAIだ。現在Persado社はFortuneのトップ100企業のうち15社をカスタマーとして抱え、平均でクリック率68%アップコンバージョン率76%アップを達成している。

Persadoが提供するもの

Persadoが誇るAI「メッセージ・マシーン」は、何年にもわたる言語科学、心理学、情報処理技術、統計学、エンジニアリングの研究の産物だ。「メッセージ・マシーン」は、データベースに登録された100万件以上の単語やフレーズを以下6つの観点から分析する。

ナラティヴ(そのメッセージが表示される背景)
感情(見た人がどんな気持ちになるか)
ディスクリプション(何を伝えているか)
行動性(見た人がどんな行動をとるか)
フォーマット(フォントや文字サイズ、色など)
言葉の位置(単語をどのように配置するか)

そしてその結果をもとに、消費者の無意識に対して最も効果的に働きかけるコピーを選択して提案がされる。消費者層・ブランドのイメージ・メディアの種類などによってカスタマイズがされており、自社のマーケティングスタイルに最適なコピーの作成が可能になる。

AIが作成するのはウェブサイトやメールマガジンの中身そのものではなく、そのタイトルやキャッチコピーなど、人の興味を引き付ける表示メッセージだけ。他にもディスプレイ広告やソーシャルメディアの投稿、ランディングページ、SMSメッセージ、プッシュ通知などにも活用できる。

Persadoの活用事例

Persadoが実際に使われている例を見てみよう。例えば、サービスの年間サブスクリプションを勧める広告の場合、以下のように書き換えられる。

(コピーライター)
Try an annual subscription – 20% off, members only!

(Persado)
Because you’re a member: here’s an exclusive 20% off annual subscriptions – take a look inside! [1]

伝えている内容は一緒だが、会員特典を打ち出した表現に変えることによって、クリック率が60も上昇した。

他にも、Fortuneのトップ100企業のとある小売業者は、SMSによって配信するポイント利用の案内に関する文言を以下に変えることで、レスポンス率を12%から21%まで上昇させることに成功している。

(コピーライター)
Get dressy! Redeem points for your next clothing purchase! Take a look:

(Persado)
Confirmed: you have points to redeem! Just click: [2]

 

感情に焦点を当てたキャッチコピー

キャッチコピーを作成するにあたって、PersadoのAIが最もフォーカスしているのが「感情」だ。毎日大量の広告やメールマガジンを目にする消費者は、その一つひとつに時間をかけて吟味しない。瞬時の直観と感情に従って行動することがほとんどだ。つまり、「メッセージを見た消費者がどのような気持ちになるか」「どのような感情を生み出すのが効果的か」を理解すれば、効果的なキャッチコピーを作成できる。

Persadoの初期分析では、ブランドが現在頻繁に利用している「感情」と、実際にユーザーに訴えかける「感情」が提示される。例えば、ユーザーのクリック数が最も高いのは「自分だけの特別感」が感じられる時であるにもかかわらず、マーケティング担当者は「期間限定」を強く推していた―なんていうギャップが明らかになるのだ。これを参考に、Persadoが提案する効果的なフレーズの中から自由に使いたいものを選ぶことができる。

「自動」と「手動」のバランス

Persadoで実際にキャッチコピーが作成されるまでの流れを見てみよう。まず、何を(セール案内、プレゼント案内、新商品の広告など)どうやって(メルマガ、広告、プッシュ通知など)伝えるかを選択する。すると過去の分析結果をもとに、コピーの候補が複数提示される。そこから消費者にどのような感情を抱かせたいかを考えながら、マーケティング担当者は好きなコピーを1つ選択するのだ。文章の長短や個別のワード、強調部位なども手動で修正可能。さらに修正したら、Persadoがもう一度そのコピーを見直し、アドバイスをしてくれる。

つまりPersadoは、アドバイザーのような存在なのだ。このような仕組みによりメッセージが機械的な「ボット化」することを防ぐ。

パーソナライズされたキャッチコピー

2017年10月、Persadoは完全にパーソナライズされたキャッチコピーを作成するプラットフォーム「Persado One」の立ち上げを発表した。Persado Oneはメッセージを受け取る人の過去の行動パターン(クリック率など)を分析し、個々の「感情プロファイル」を作成する。それをもとに、最適な表現を提案する。つまり、同じ内容の宣伝であっても、受け取る人によって表示されるメッセージが異なるのである。

Persado Oneの技術は、さらに類似オーディエンス(関心・行動などにおいて共通した特徴を持つユーザー)にも広げて利用することができる。既存の消費者層やコンバージョンした消費者の分析結果を利用して、類似オーディエンスに適したキャッチコピーを表示させることで、新たな消費者を獲得することが容易になるだろう。

まとめ

NY発のベンチャー企業「Persado」は創業から短期間で、マーケティング業界に革命を起こそうとしている。Persadoは膨大な量のデータをAIに分析させ、さらに言語科学、心理学、情報処理技術、統計学、エンジニアリングの最先端の研究結果を反映させることで、消費者の注目を引き付ける効果的なメッセージを自動で作成する。

さらに、最新のプラットフォームであるPersado Oneは、個々人の好みに応じてパーソナライズされたキャッチコピーを表示させることも可能。自分だけに作られたメッセージが持つ力はきっと計り知れないことだろう

Persadoは現在25言語に対応しており、近々に日本語にも対応する模様。オンラインメディアを通じたマーケティングが主流の時代、さらに一歩先を行くPersadoの発展から目が離せない。

<参考>