開封率99%のSMSメッセージとは?成功の鍵は「パーソナライズ化」――NY発AIスタートアップAttentive社

デジタルマーケティングの主流は、メールではなくSMSメッセージになるかもしれない。この記事では、AI技術を活用してパーソナライズされたテキストメッセージを作成するNY発のベンチャー企業「Attentive」を紹介する。

テキストメッセージはもはや友人や家族とのコミュニケーションに使うだけのものではない。多くの企業が新規カスタマーの獲得のために、SMSテキストメッセージを活用するようになっている。長いことマーケティングツールとしては考えられていなかったSMSが、次第に重要なプラットホームになりつつあるのだ。

そんなトレンドを率先するのが、NY発のベンチャー企業Attentiveだ。Attentiveは、受け取る人に合わせてパーソナライズされたテキストメッセージを作成。その効果は絶大で、平均で開封率99%、ROIを25倍に拡大させている。今や多くの大企業のデジタル収益のうち、無視できない割合がAttentiveのおかげによるものとなっているのだ。

一体なぜNYのスタートアップはテキストメッセージに注目するのか?パーソナライズされたメッセージとはどういうものか?Attentiveの成功の秘訣とその技術を詳しく見ていこう。AIを活用した未来のマーケティング技術に興味がある人は必見の内容だ。

Attentiveはどんな会社か?

Attentive概要

Attentiveは、2014年に設立されたブランド向けのパーソナライズメッセージ(テキストメッセージ)プラットホーム。商品のおすすめ、安売り情報、カスタマーサービス等々を行う。メッセージの開封率99%、CTR 30%以上改善の実績がある。Boxed、NineWest、AMOREPACIFICなどすでに50社以上が利用している。

設立者ブライアン・ロングとアンドリュー・ジョーンズは、共にTwitterの出身。Attentive以前に設立した会社TapCommerceはTwitterによって1億ドルの価格で買収された経験がある。2018年、Attentiveは1300万ドルの資金調達に成功し、事業をどんどん拡大している。

Attentiveが提供するもの

Attentiveがフォーカスしているのは、SMSメッセージを利用したマーケティングだ。eメール離れやマーケティング戦略の画一化に目を付けたAttentiveは、受け取る人に合わせてカスタマイズされたテキストメッセージを作成するAIを開発。ユーザーの場所やアクティブな時間だけでなく、過去の購入履歴などの行動データを分析し、最も効果的なメッセージを作成する。

各ユーザーの好みに合わせたメッセージが送られるため、メッセージの開封率はほぼ100%。さらに、テキストメッセージの作成だけでなく、ユーザーが簡単にサインアップできるように、自動で電話番号やメールアドレスの欄を埋める仕組みも開発中だ。

Attentiveの活用事例

Attentiveの主な顧客は、服飾・小売業だ。季節限定商品、会員限定セール、新商品の発表のお知らせだけでなく、カートに未購入商品が残っている場合やサインアップ直後のフォローメッセージなど、Attentiveを活用できる場面は非常に多い。

例えば高級ブランドCOACHは、春の新商品発表にSMSメッセージを利用した。春の大掃除をイメージさせる語彙(リフレッシュなど)を多用。また文字だけでなく明るい色の画像も添付することで、ビジュアルにも訴えかけるキャンペーンを展開した。COACHのマーケティング代表者はAttentiveを「最も現代的なマーケティングツール」と評している。

一方でファストファッションブランドRainbowは、ユーザーが商品を購入せずにウェブサイトを去った場合、30分以内にリマインダーとなるメッセージを送信。このメッセージにはカートへのリンクが含まれているので、簡単に戻ってショッピングを続けることができる。この導入から2~3週間で、RainbowはROIを83%も増加させることに成功した。

なぜSMSテキストメッセージか?

AIを使ったマーケティングツールは多い中で、AttentiveがユニークなのはSMSメッセージに絞った商品を提供していることだ。なぜ伝統的なEメールや広告ではなく、SMSなのか?

SMSはメールなどよりも、ずっと「個人的な」印象を与えることができる。SMSは主に友人や家族から届くものが多いので、多くの人が通知をオンにしており、届いたらすぐに、必ず確認するという習慣がついている。対してメールは重要なものだけを開いて読むのが通例なので、企業からのメールは読み飛ばされることが多いのだ。SMSメッセージは、自分だけに直接届いているという感覚を与えることができるため、ユーザーのエンゲージ率も高くなる。

加えて、今日ではパソコンよりもスマホを利用する機会の方が断然多い。スマホで見るのに特化したSMSの方が、ユーザーにとって日常的に受け入れやすい。またSMSメッセージはメルマガよりも簡単に解約することができるので、「解約したいけど面倒で放置している」という人が少ない。つまり受け取る人のクオリティ自体が高く、適切なメッセージを送ることさえできれば、効果が出やすいのだ。

SMSは比較的新しいマーケティングチャネルだ。言い換えれば、メールや広告などから離れてしまったユーザーに向けてリターゲティングするのにも最適である。AttentiveのCEOブライアン・ロングは「テキストメッセージは、リターゲティングにとって唯一のチャネルとなるだろう」と語っている。

パーソナライズされたメッセージの力

統計によると、アメリカでは携帯電話を持っている30~49歳のうち98%が、そして18~29歳では100%がSMSメッセージを日常的に利用している。だからと言ってなんでも適当に送り付ければ良いというわけではない。Attentiveがこれだけの成功を収めることができた鍵は、メッセージの「パーソナライズ化」にある。

パーソナライズとは、受け取る人に合わせて内容を変えるということだ。「ユーザーは一斉送信される画一的なメッセージにうんざりしている」とロングは述べる。Attentiveはユーザーの行動を分析するAIを活用し、個人の特徴を把握する。これをもとに、その人が最も興味を持ちやすい内容と言葉遣いでメッセージを送信できる。

さらに生活のサイクル(SMSを確認する時間帯はいつか、物理的な位置情報など)も分析。これにより、お店の近くにいる時やオンライン時などにメッセージを送ることができ、開封率がぐんと高まるのだ。

Attentiveを利用したメッセージを受け取ったユーザーは、今までの広告やメールとは違った親近感を抱くことができる。またリアルタイムで会話しているような感覚になるため、ブランドに対する好意も上がり、リピーター率の上昇も期待できる。

エンゲージを徹底サポート

Attentiveはメッセージを送るだけでなく、開封後のユーザーのエンゲージを徹底サポートする。例えば、ユーザーがメッセージ内の「サインアップ」リンクをクリックしたら、既に電話番号やメールアドレスなどの情報が埋められている状態になる。つまり、面倒な入力手続きをすることなく、たった2回のタップでサインアップが完了するのだ。Attentiveはこれを「ツータップシステム」と呼び、特許申請中だ。

社名のAttentiveは英語で「気配りのできる」や「親切な」「面倒見が良い」という意味がある。その名の通り、Attentiveはユーザーを多方面から徹底的にサポートすることを重要視している。「このブランドは私のことを気にかけてくれている」と思わせること―これこそ未来のマーケティングの鍵かもしれない。

まとめ

ある統計では、若い世代の66%がメールよりもSMSメッセージを好むと回答している。この事実に着目し、デジタルマーケティング業界の新たな媒体を開拓するのがNY発のスタートアップ「Attentive」だ。Attentiveはユーザーの特性を分析するAIを活用し、最適なメッセージを送信することで、メールでは実現できなかった高いコンバージョン率を達成している。

Attentiveはメッセージを送りつけるだけでなく、そこからユーザーのコンバージョンやリピート利用を徹底的にサポートしている。特に情報を手動で入力することなく、2回タップするだけでサインアップが完了する画期的な仕組みは、現在特許取得申請中だ。

Attentiveを使って送信されたテキストメッセージの開封率は約100%、CTR率は平均で30%というのだから驚きだ。COACHやAmorePacificなどの大手小売業者がすでに活用しているAttentiveのプラットホームがマーケティング業界にさらに広がることは間違いない。SMSという新しいフィールドをどう開発していくか―未来を見据えたマーケターは考える必要があるだろう。

<参考>