LISUTO社データアナリストに聞くAIとEコマースの未来

人工知能ブームはコンピューターの歴史を遡ると、過去にコンピューターが家庭に普及し始めた80年代やクラウドが登場した2000年当初など、数回あったことが確認されますが、2015年以降より再び、機械学習を用いた人工知能の技術が話題になることが多くなった。
スタートアップ大国として、日本で現在注目を集めているイスラエルもその例にもれず、AIに特化したスタートアップが様々な分野・業界で盛り上がりをみせている。今回はイスラエル現地のスタートアップ企業LISUTOにてEコマースに特化した人工知能を開発している社員のズッカーマンさんにお話を伺った。

LISUTOについて会社の特徴を教えてください。

LISUTOは世界初の人工知能を使った国内外への商品出品の効率化や、商品分類の最適化を提供する会社で、日本とイスラエルにそれぞれオフィスがあります。

イスラエルオフィスはR&D拠点として研究開発をおこなっており、日々人工知能の精度を上げるために奮闘しています。現在提供しているサービスはLISUTO CLASSICとLISUTO AIに大きく分かれており、ざっくりと説明するとCLASSICは商品情報を1言語で登録するだけでAIが自動で翻訳を行い、在庫管理までしてくれる出品効率化、AIは商品分類のために人工知能がタグ付けを行ってくれるサービスです。どちらもAIベースのプロダクトですね。

イスラエルではLISUTO AIに力を入れ、オンライン店舗をお持ちで数百から数千万点の商品を販売している小売業者様や、ECプラットフォームを運営している会社向けにサービス提供をおこなっております。

私は社内のデータアナリストとして顧客から得たデータの分析や、人工知能を開発する際に必要なデータを収集・解析をしています。

御社のCEOはイスラエル人起業家だと伺いましたが、どのような経歴をお持ちなのでしょうか?

弊社のCEOニール・プラテックは日本生まれのイスラエル人という、非常に面白いバックグラウンドを持った人物です。彼はまず世界で初めて、日本発の高級ブランド品ECサイトを立ち上げ運営を行っておりました。その際に出品の効率化や分類の大変さについて身をもって実感し生まれたのがLISUTOというわけです。

御社のサービスは人工知能を利用していることが最大の特徴といえますが、AIプロダクトについて詳しく教えてください。

我々の人工知能は商品を分類する際に最大の力を発揮します。ここでいう分類というのはEC業界でいわれる「タグ」を意味していて、オンライン上で商品を販売する際、どのECプラットフォームでも1つ1つの商品に色・形・年代など特徴となるタグをつけて分類する必要があります。
この作業をすることによって、ユーザーが実際にサイト内で通常の検索や、絞り込みで検索を行う際に商品についているタグに沿って結果が表示されるようになります。一見地味な作業ではありますが、このタグが付いていないと、せっかく商品を出品しても何千・何万という競合商品に埋もれてしまいユーザーに表示されず実質「消え商品」としてプラットフォームに姿が現れなくなってしまいます。

最近では大手電化製品店や家具店もECに進出していますが、彼らのような大規模なお店は既に何十万点もの商品を保有しているので、1つ1つに手作業でタグを付けることはあまり現実的ではありません。そこで、弊社のAIを使うことによってAIが商品のタイトルテキストから情報を読み取り、膨大な作業時間を要さなくても数分でタグ付けができるというわけです。

(英語版はこちら:https://youtu.be/B8CLoeWzdHg

イスラエルのオフィスがR&D拠点として機能しているということですが、チーム編成はどのようになっていますか?

内訳は開発デベロッパ:3名・データサイエンティスト:2名・コンテンツ/分析:4名・HR/PM/DBA/GM:各1名の計13名とかなり少数精鋭なチーム編成となっております。

まだまだ若い会社というのもありますが、おかげさまで取引先様の数も増え続けており、今年中により多く採用してオフィスを移転しようという計画があります。
弊社の人工知能を使っていただける方が増えれば増えるほどデータもその分比例して増えるので、おそらく現在私の所属する分析チームに負担が出てくることが予想されるので積極的に採用中です。人数が少ない分、大きいプロジェクトがある際はプレッシャーもその分大きいですが、人数が少ないからこそ他チームとの意見交換がスムーズに行われるメリットもあります。

自動出品に関して競合と異なる点はありますか?

自動出品をうたうサービスは他にも何社かございますが、人工知能を使って商品を特定し、タグをつけてくれるサービスは弊社だけかと思います。
商品のデータが増えれば増えるほど深層学習によって人工知能の精度があがり、より正確なタグをつけられるようになります。
また、現在弊社で使用されているデータはほとんどがテキストベースによるものですが、今後はAIが得意とする画像認識の技術も積極的に顧客向けに提供していけば、さらに精度が高く面白いサービスを提供できるかと思います。

人工知能を開発するうえでの醍醐味はなんでしょうか?

実際に顧客から受け取ったデータを正確に読み取り、精度が上がっていくプロセスを見るのは子供の成長をみているような気持ちになります。

私は開発チームではなく、あくまでコンテンツ/分析チームの一員ですが会社の規模が小さい分開発に限りなく近い環境で働くことができるので、日々のバグやタスクを共有しながら人工知能について学べるのも嬉しいです。
また、社内で月に数回、チームの誰かがレクチャーをする制度があるので、そのチームに属していなくてもニューラルネットワークについてのベース知識、データ分析を行う際のSQLの使い方などを知ることができ、各々が様々な面を幅広く学びながら業務に活かし、人工知能に対する理解を深め、開発の醍醐味を味わうことが可能になっているかと思います。

現在は日本市場にフォーカスしているようですが、海外EC向けへの展開も視野に入っているでしょうか?

もちろんです。既にいくつかの海外ECにて出品の実績がございます。日本とテルアビブにオフィスがあるので現在は日本にフォーカスしつつ、海外でももっとコラボレーションできるプラットフォームや取引先がないか常に模索しているところです。

日本はAmazon、楽天、そしてメルカリなども最近は利用者が非常に多く、オンライン上でのやりとりが非常に盛んな国だと言えます。
実際に弊社でカバーしている日本のショッピングモールも、アマゾン・楽天・ヤフオク・ヤフーショッピングと、メインをおさえています。同じようにアメリカではAmazonやイーベイがかなりユーザーに利用されている印象があり、弊社もこの二大プラットフォームは既にカバー済みです。イーベイにおいてはドイツ版も存在していて、弊社より出品が可能となっております。

次に狙うべき市場はアジアになってくるのですが、中国はアリババなどかなり大きいプラットフォームを持っているのに加え、韓国も美容系やファッション系のECサイトが無数に存在しているのでかなりチャンスだと思います。予定では今後、世界各国の約90のマーケットプレイスに対応していきます。

EC業界において人工知能は今後どのような役割を果たしていくと思いますか?

消費者の中にオンラインとオフラインの垣根は既にないと言っていいというほど、幅広い世代でオンラインショッピングが日常的に行われています。

今後もEコマースの市場は広がっていくことは明らかかと思いますが、市場が広がるとともに扱う商品数も比例して増えるので人工知能を使った時間の節約はとても重要かと考えられます。弊社のプロダクトを通して会社規模の大小にかかわらず、商品に対する最適な分類を見つけ、さらに国内外へストレスなく出品し売り上げをあげていただければ弊社としても非常に嬉しいです。

人工知能とEC市場の相性はかなり相性がいいので、この2つがタッグを組めば、今後ユーザーのエクスペリエンスの質も向上しさらなる拡大をみせることは間違いないでしょう。