複数のマーケティング・ツールの統合を可能にする、mPartileのCDP(カスタマーデータープラットフォーム)

mParticleは、集めたデータのセグメンテーション他のマーケティング・ツールとの統合を可能にする。
mParticleのCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を使った企業やマーケッターは、自社のマーケティングの精度を高めることができる。

マーケッターたちは常に、「いかにして新しい顧客を獲得するか」「どのようにして既存の顧客を守り続けるか」といった難題に直面している。そのために彼らが重視しているのは「顧客を知ること」だ。
顧客たちを知る手段としてデジタルデバイスが活用されていることは周知のとおり。それまで捨てるしかなかったビッグデータから有益情報を抽出できるようになり、さらに分析技術も向上した。

マーケッターたちは今、「ツールの選択を間違えなければ」従来とは比べ物にならないくらいのパーソナライズされたマーケティングを展開できる。そして、その洗練されたマーケティングを行えるかどうかで、ビジネスの成否が決まるといっても過言ではない。

洗練されたマーケティングを実施するための「ツール」のひとつが、NY発のスタートアップ、mParticleが提供するCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)だ。
CDPは、顧客一人ひとりの属性や行動のデータを収集、蓄積、統合するためのプラットフォームである。
mParticleのCDPを使えば、集めた顧客データを他社のマーケティング・ツールで処理・加工することができる。これにより複数のマーケティング・ツールを統合する際に生じる技術的なトラブルを解決できる。

この機能が企業やマーケッターたちにどのようなメリットをもたらすのか。

mParticleとは

mParticleは、2013年にMichael Katz氏が設立した、AIスタートアップ。現在はニューヨーク、サンフランシスコ、シアトル、フロリダ、そしてロンドンにオフィスを構え、Airbnb、Spotify、Chick-fil-Aといった大企業にサービスを提供している。
また、2019年にはSIIA(米ソフトウェア&情報産業協会)主催のCODiE賞で、最優秀CDPに選ばれている。

創業者のKatz氏はYahoo!出身。スマホが爆発的に普及していくなかで、モバイル関連の「統合的なデータ収集・活用の仕組み」がほとんど存在しないことを実感し、mParticleを立ち上げた。

mParticleの収益の柱は、SDK(ソフトウェア開発キット)を使ってiOSモバイルやAndroidモバイルからデータを収集するビジネス。SDKとは、ソフトを開発するために必要なツールを集めたものである。
mParticleのユーザー企業は、さまざまなモバイルやデバイスから顧客情報を集めることができる。
さらにmParticleでは、AppleTVやXbox、VRやARなどの分野でもマーケティング・ツールの統合を手掛けている。

mParticleは、2017年のシリーズCラウンドで、3,500万ドル(約37億9691万円)の資金を調達。現在、世界中で毎月10億人を超えるユーザーのデータを管理しており、これからさらに事業を拡大していく見通しだ。

mParticleのサービス概要

mParticleのサービスは、次の6項目で構成されている。

1.データを集める

mParticleが開発したAPIやSDKを利用すれば、ユーザー企業は、クラウドサービス、バックエンドシステム、モバイル・アプリ、ウェブページなどから顧客データを収集することができる。
ユーザー企業はデバイスごとに異なるソフトウェアを開発する必要がないため、コストと労力を削減でき、さらに複数デバイスが保有するデータを簡単に統合することができる

2.データを整理する

mParticleは、集めたデータを人間の言語に変換し、分類、整理、重複の排除、標準化を行うことができる。
また、さまざまなソースから集めたイベントやデータ属性(アトリビュート)を図式化することもできる。さらに、リアルタイムでデータ管理できる点も特長のひとつである。
mParticleのサービスを利用する企業は、より確かなデータ戦略を構築することができる。

3.データを強化する

mParticleが集めた第1次情報を、Oracle Data CloudやAcxiomなどが提供するツールで解析することで、ユーザー企業は自社のデータを強化できる。
強化したデータは、自由にCRM(顧客関係管理)システムに取り込むことができる。mParticleのユーザー企業は、オンラインでもオフラインでも顧客理解を深めることができるようになる

4.データを統合する

mParticleのSingle Customer Viewプラットフォームを使えば、保有するすべてのデータの統合や、個人単位でユーザー・プロファイルを作ることもできる。
さらにmParticleのIDSyncを活用すれば、IDやパスワードやユーザーアカウントなどのアイデンティティを統合・管理することまで可能になる

5.セグメンテーション

収集した膨大なデータ群の中から、自由にデータ属性(アトリビュート)を選んで必要な情報を抽出することができる。mParticleのユーザー企業は、顧客のセグメント化が簡単に行えるようになる。
セグメンテーションはマーケティングの重要要素のひとつである。企業がセグメント別に最適なキャンペーンを企画すれば、ターゲティングはより正確になる。

6.マーケティング・ツールにつなげる

統計分析、データウェアハウス、広告ソリューションなど、世の中にはマーケティング・ツールがあふれている。Google Analitics、Facebook、Amazon Mobile Analitics、Bingなど、その数は200に迫るとも言われている。
mParticleは、これらすべてのマーケティング・ツールに接合させることができる。つまり、mParticleで集めたデータと他社のマーケティング・ツールを統合させれば、A/Bテストやキャンペーン、オファーも簡単に行えるようになるのだ。

mParticleの利用方法

mParticleの最大の特徴は、インプットツールとアウトプットツールを統合することである。インプットツールは、情報を収集する役割を担う、モバイル・アプリやサイトを指す。アウトプットツールは、情報を活用する統計ソフトやマーケティング・ツール、広告ソリューションを指す。
mParticleのサービスを使えば、インプットからアウトプットまで、シームレスなマーケティングを展開できる

そのための最初のステップは、インプット先を登録することである。

インプット先 登録(HPから抜粋)

mParticleにログインし、「セットアップ」→「インプット」を選択する。希望するインプットを選んだらキーとパスワードが発行されるので、それを利用してSDKをダウンロードする。

SDK設定(HPから抜粋)

SDKの設定が完了したら、「アクティビティ」→「ライブストリーム」とページを移動して、データが入ってくることを確認する。

mParticleが収集するデータは、イベントデータとユーザーデータの2種類に分けることができる。

イベントデータとはチャネル内で行われたアクションの回数などのこと。アクションとは、アプリの起動やリンクのクリック、ビデオの視聴、商品の購入などだ。

ユーザーデータとは、ユーザーが使用しているデバイスの種類やEメールアドレス、ID、年齢、性別などの登録データを指す。

アプリの起動状況や、どのデバイスからアクセスしているかといった情報は、SDKを設定するだけで分析することができる。

データ分析(HPから抜粋)

「オーバービュー」タブからはアクティブユーザー数、インストール数、アクティブセッション数、売上などの基本情報を把握することができる

データの抽出(HPから抜粋)

「フィルター」機能を使うことで、必要なデータだけを抽出できるので、常に全データを取り込むといったわずらわしい作業を行なわないで済む

インプットの設定が完了したら、次はデータをアウトプットにつなげる。

mParticleは、マーケティング・ツールを提供している100社以上の企業と提携しているので、ユーザー企業は自社でこれまで使っていたマーケティング・ツールを利用することができるだろう。

ツール名の入力(HPから抜粋)

「ディレクトリ」タブを開き、使用したいアウトプットツールの名前を入力する。ここではAmplitudeを選択してみる。ロゴをクリックし、案内にしたがって必要な情報を入力する。

案内に基づく情報入力(HPから抜粋)

インプットとアウトプットの結合(HPから抜粋)

次に「コネクション」タブから、既存のインプットとアウトプットを選択し、両者を結合する。

マーケティング・ツール(HPから抜粋)

設定が完了すれば、Amplitudeなどのアウトプットツールに、mParticleで収集したデータが流入する。これで自由にマーケティング・ツールとして使えるようになる

次にセグメンテーションの方法を紹介する。
mParticleのプラットフォーム内でユーザーをセグメント化するには、「オーディエンス」タブを開き、どのような情報を元に分類するかを選択する。

ユーザーのセグメント化(HPから抜粋)

例えば「最近3日以内にアプリを一度も起動していないユーザー」や「カートに未購入商品が残っているユーザー」といったセグメントを作成することができる。

セグメント グループ作成(HPから抜粋)

また、mParticleの画面にしたがって必要な情報を選択するだけで、セグメントグループを作ることも可能だ。「ANDやOR」「~を含まない」などを使えば、簡単に詳細なセグメンテーションを実施できる。

mParticleで作成したセグメントは、そのままMailchimpなどのオーディエンス・ターゲティング・ツールにつなげることができるので、キャンペーンの企画資料を作ることができるだろう。

ここで紹介した機能は、mParticleのほんの一例にすぎない。第三者機関が集めているデータを使ったり、複数のインプットやアウトプットを同時に管理したりと、活用方法はユーザー企業やマーケッターが思い描くだけ存在するといってよい。

まとめ

「CDPの最大の課題はデータの統合だ」とmParticleのCEO、Michael Katzは語る。
消費者は今、数多くのデバイスを使いこなす。それらのデバイスから消費者の包括的なデータを獲得し、個人個人のプロファイルを作成することは容易なことではない。CDPという言葉がまだ存在しなかった頃からこのソリューションの開発に取り組んできたmParticleは、今や業界をリードする企業となっている。
mParticleが提供するサービスは、ユーザー企業が独自にカスタマイズできる点も魅力だ。顧客データのインプットとアウトプットをつなぐ「データ統合プラットフォーム」のmParticleは、近い将来、マーケッターにとって必須アイテムになるかもしれない。

(※画像はすべてmParticleのガイドラインhttps://docs.mparticle.com/guides/より引用)

<参考> ※為替レート: Google Finance 2019年7月末時点