顧客との会話を音声解析する次世代型CRM Gong.ioを徹底解説

IT技術の発展により、全ての顧客情報をデータベース化して顧客との関係性を最適化するCRMシステムがビジネスの現場において活用されるようになった。インド大手市場調査会社Market Research Future (MRFR) によると、世界のCRM市場規模は2023年には350億ドルに達すると予測されており、今後も右肩上がりの需要増加が見込まれている。そのようなCRM市場の活況の中、Amit Bendov,Eilon Reshef設立のGong.io社は、従来のCRMとは一線を画す音声認識型CRM Gong.ioを開発した。

同社は2015年の創業時から破竹の勢いでユーザーを増やし、2019年2月にはシリーズBで4000万ドルの資金調達を行った。本記事では、音声認識型CRM Gong.ioと従来のCRMとの違いや実際に営業現場においてどのように活用されているのかを解説する。

ビジネスの現場においてもはや必要不可欠なCRM

情報化社会が到来し、消費者が大量の情報にさらされた結果、従来のマスマーケティングによる大多数への訴求からダイレクトマーケティングが求められる時代となった。

製品もサービスも膨大な選択肢の中から”選べる”立場である顧客にとって、一人一人のニーズを把握し、適切なコミュニケーションをとるOne to Oneマーケティングが購買の可否に大きな影響を与えるようになった。パーソナライズされた情報を元に顧客と強い関係性を構築し、顧客生涯価値を最大化するために、顧客データの一元管理・アクセシビリティは必要不可欠である。

特に営業の現場においても、アプローチする見込み顧客の属性・状態・予定・取引・担当者などをCRMで一元化し、営業担当者が適切な顧客データに即時アクセスできるようになった。これにより、パイプライン管理が容易になり、効率的に営業サイクルを回すことが可能になった。もはや個人の感覚や経験則に基づくといった属人的なアプローチは時代遅れといっても過言ではないだろう。

営業現場における従来のCRMの問題点

しかしながら、従来の一般的なCRMでは”顧客とのやりとり”の部分は営業担当各自の属人的な情報入力に頼りがちで、営業マネージャーや本人以外の営業担当者たちにとっては二次情報として曖昧に伝わってしまうといった問題が発生してしまう。

本来であれば貴重な情報源である顧客との生きた会話が、エビデンスを持ったデータとして蓄積されることはなく、特定の会話内容と成約率の相関性を可視化できていない状態であった。また、優秀な営業マンのセールストークが”見える化”・”データ化”できていないことで、新人営業マンのオンボーディング・コーチングコストも増大してしまうといった問題も発生する。

AIによる音声解析型CRM Gong.ioの登場

Gong.ioの提供する音声分析型CRMでは、電話・メール・オンライン商談・SNS・チャットツールなど、様々なチャネルで発生する顧客とのセールストークを自動で録音・テキスト化し、AIアルゴリズムを用いて解析することでインサイトの発掘を可能にした。

通話データはCRMのレコードに紐づけられるので、会話データを成約率・セールスサイクル期間などの成果指標と照合することができる。チーム内のベストプラクティスを数値として可視化し、データに基づいた営業戦略を展開することができるのだ。

CRM Gongの概要

価格 : 非公開/見積もり

提供形態 : クラウド型SaaS

対応機種 : モバイル対応(Android・OS)

創業者のBendov自身が営業としてスタートアップで働いていた際、失注の理由について分析したかったが、CRMのデータベースを見ても現場で起きていることのインサイトを得ることができなかったという苦い経験から、Gong.ioは創業された。2017年末には100社だった顧客数は現在350社ほどに増加し、チャーンレートはほぼゼロである。

Gongの活用方法

1.セールストークの録音・テキスト化・分析

従来のCRMでは、営業担当者が”サマリ”としてメモのような形で記録することが多く、それでは成約・失注した理由について正確に把握することはできなかった。Gongの録音機能ではセールストークを全て自動で書き起こし、データとして解析される。

2.トピック検索機能

データベースとして蓄積された会話データから、価格・決裁・競合サービス名など、特定のキーワードについて言及された会話を一瞬で見つけられる機能だ。特に、他社サービスとの競争力に問題があると考えていれば、該当サービスの名前を検索することで、自社サービスのもつ優位性・劣位性を顧客視点で確認することができる。多くの顧客にとって製品購入の決め手となる要因、阻む要因を会話内容から特定しサービス自体の改善や顧客に訴求すべきポイントを把握することができるのだ。

3.営業チームのパフォーマンス分析

社内のトップセールスが顧客との会話の中でどのように成約を勝ち取っているのか、数値として可視化される。顧客とどのくらい価格について議論したか、「聞く・話す」の比率はどのくらいなのか、一流の営業術を裏付けの取れたナレッジとして社内メンバーに共有することができるのだ。

4.セールストークのフィードバック機能

セールストークの内容を顧客・社内メンバーと簡単に共有することができる。特にフィードバック機能が優れており、改善すべきポイントをピンポイントで指定し、担当者をタグ付けしてタスクとしてアサインできる。セールストークの見える化とフィードバック機能により、営業担当が会社の販売促進方法に従っているのか確認できるだけでなく、新人のオンボーディング・コーチングにかかるコストを大幅に削減することも可能である。

まとめ

従来のCRMとは異なり、Gong.ioではブラックボックス化されていた顧客との会話内容をAI分析・可視化することにより、成約率やセールスサイクルなどの成果指標と特定のコミュニケーションを照合してアセスメントすることができる。再現性を持ったセールスデータがナレッジとして蓄積されることで、社内の営業力を最良の実践方法をもって盤石なものに固めるだけでなく、新人をトップセールスに近づける効率的なオンボーディング・コーチングも可能になるのだ。

<参考>