顧客に合わせて商品をレコメンド!JivoxのAIが優れモノ

Anyaはインド・ムンバイ出身の28歳の女性で、旅行が趣味。彼女は旅行のために、普段から貯金をしている。旅行会社にとって彼女は最良の顧客だが、彼女にどうアプローチすればいいのだろう。

もし、Anyaの「性別、パーソナリティ、休暇にしていること、住んでいる場所、よく旅行に出かける時期、次にしようとしていること」を把握できる技術があったら?
さらに、Anyaだけに向けた旅行キャンペーンや広告を、インスタグラムに展開できたら?
旅行会社がこうした技術を持てば、顧客一人ひとりに最適な旅を販売できる。それを可能にするのがAIだ。

2019年は「AI広告元年」になるだろう。そのくらい大きな変革が広告業界に押し寄せている。今日、企業が保有する市場や消費者に関するデータ量は「ペタバイト」規模に達する
※1ペタバイト=1,125兆バイト。

あまりに膨大すぎる情報量をほとんどの企業は使いあぐねているが、AIを駆使すれば、情報を有効活用できるようになる

アメリカでの調査では、AIを導入した企業の82%が投資対効果を実感している。また、2019年末にはデジタルメディア業界の80%の企業が、何らかの形でAIと広告を融合させるとの報告もある。

そして、AI広告、AIマーケティングをリードする企業のひとつがインドで生まれ、現在はアメリカに本社を置く、Jioxである。

Jioxコーポレーションとは

Jioxコーポレーション(Jiox)は、デジタル広告とデジタルマーケティングの変革に乗り出している。提供するサービスは、クラウドをベースにしたデータ駆動型オムニチャネル・プラットフォーム。

Jivoxのミッションは
1.企業のブランド構築支援
2.パーソナライズした広告の大規模展開
3.企業のマーケターと顧客を繋ぐ

本社はカリフォルニア州サンマテオにある。資金調達額は4,640万ドル(約50億3,800万円)に達した。2019年4月にはインドの凱旋を果たし、ベンガルールに新しいエンジニアリングセンターを設立している。
Jivoxの推定年間売上高は2,000万ドル(約21億7100万円)で、顧客リストにはペプシ、トヨタ、ソニー、JBL、ジョンソン&ジョンソン、IBM、インテル、アディダス、マークス&スペンサー、ベネトン、メルセデス、シンガポール航空といったビッグネームが連なる。
主力サービスはAIを搭載した「Jivox IQプラットフォーム」だ。

AIで旋風を巻き起こす

Jivoxは、AIを使った広告・マーケティング戦略で「企業は顧客を360度、全方位から囲い込むことができる」と考えている。同社がこれほど強気なのは、AIを使うことで「推測」を排除できるためだ。
広告パーソンやマーケターたちは、推測が広告やマーケティングを間違った方向に向かわせてしまうことがお分かりだろう。

Jivoxは、リアルタイムのパーソナライゼーションを提供することで、こうした課題を解決する。パーソナライゼーションとは、消費者一人ひとりのニーズに合わせたサービスを提供することである。
パーソナライゼーションが広告やマーケティングの「正解」のひとつであることはよく知られているが、手間がかかって運用が難しい。しかし、AIの情報処理能力がリアルタイムなパーソナライゼーションを可能にしてくれる。

このシステムを利用すれば、グローバル企業は世界中の何百万人もの顧客一人ひとりに「その人だけのデジタル体験」を提供できる、と同社は考えている。

顧客の多様化が進み、企業は集客用の媒体や流入経路といったチャネルの構築に苦労しているはずだ。Jivox IQプラットフォームを使えば、適切なタイミングで最適なチャネルを構築できる。

適切なチャネル網を構築できれば、収益を最大化できるうえ、経営者は正しい判断を下すことができる。

(HPより抜粋)

顧客とのつながりを最大化させて売上高を増やし、スピード経営を実現する。
顧客は、自社メディアだけでなく、他社のメディアからも流入してくる。企業は、常に各メディアを最適化することが求められている。

主力サービス「Jivox IQプラットフォーム」

IQプラットフォームの高いパフォーマンスを支えているのは、独自のAI技術「ニューロン」。これはニューラルネットワーク技術のひとつで、大容量のインメモリ・データ・セットとディープラーニング(深層学習)を使い、顧客のニーズを把握。より高度なパーソナライゼーションを顧客に提供することができるのだ。

また、ユーザーの閲覧履歴や企業の商品特性から、独自のアルゴリズムを構築。このアルゴリズムは、顧客の購入履歴を分析し、「その顧客がまさに今求めている商品」をレコメンドすることができる。

「クリエイティブ・オプティマイザー」も紹介したい。これは、特定の顧客に最適な商品やサービスを自動で見つけだすシステムである。
コレクターズアイテムを集めている30歳の男性がいるとする。玩具メーカーがクリエイティブ・オプティマイザーを使って彼に「バットマンのフィギュアの発売」を告知できる。それを見た彼は、喜んでフィギュアを買うだろう。
この場合、データトリガーに「男性、玩具、販売」を使うが、他のデータトリガーを使ってアルゴリズムを構築すれば、どんな業界の企業にも適応させることができる。

ここで、JivoxのAIが「行っていること」をまとめよう。
1.ビッグデータの活用
2.複数のデータソースの統合
3.リアルタイムでの分析
4.ビジネス上の判断の支援

これらによって企業は「何ができるようになる」のだろうか。
腕時計を探しているユーザーを、1秒もかけずに性別と好みを判断し、その人が好みそうな商品をサイト上に示すことができる。1秒以上経ってしまうと意欲が冷めてしまう可能性がある。瞬時に、自動的に商品をリコメンドしなければ、商品を買わせることはできない。

どのように動いているのか

IQプラットフォームがどのように動いているのか紹介する。

(HPより抜粋)

情報の収集、
統合
顧客に合わせた
パーソナライズ
顧客との
繋がりの強化
・個人のプロフィールや好み、閲覧記録
・地理や位置
・天候や時間、休日
・製品情報
・1次情報や第三者機関のデータ

・キャンペーンデータ
・プログラムメディア
・パーソナライゼーション・ハブ
・機械学習
・ネイティブ広告
・動画
・モバイル
・SNS
・Eメール

IQプラットフォームはまず、さまざまな情報を収集し統合する。対象となる情報は、個人のプロフィール、好み、閲覧記録、地理や位置、天候や時間など。
そして、統合したデータを顧客のニーズに合わせてパーソナライズする。このときプログラムメディアやパーソナライゼーション・ハブといったツールを使う。顧客ニーズを探るのは、AIの心臓部である機械学習システムだ。

次に、顧客とのつながりを強めていく。
顧客との接点は、ネイティブ広告や動画、モバイル、SNS、Eメールなどのデバイスや媒体。AIは、特定の顧客にすすめる商品や選りすぐりの商品を顧客に提示する。
このプラットフォームを使えば的確にターゲティングでき、所要時間はわずか数秒しかかからない。

ダイナミック・クリエイティブ・オプティマイゼーション(DCO)の実力

IQプラットフォームが優れたパフォーマンスを発揮できるのは、ダイナミック・クリエイティブ・オプティマイゼーション(動的創造的最適化、DCO)プラットフォームのおかげである。その仕組みを紹介しよう。

DCOプラットフォームは、1人の顧客に「この1品」を提案するために、リアルタイムで数千もの商品やメッセージにする文章を検討する。つまり、広告作成の自動化である。
作成される広告には、人的要素が介入する余地がない。つまり、「推測」が存在しない。広告パーソンやマーケターたちは、完全にデータに裏打ちされた「正解」が得られる

【活用事例】プレイステーション

これは、DCOを使ったプレイステーション用ゲームソフトのマーケティングの概念図である。

(HPより抜粋)

行動を分類する「顧客マイクロ・セグメンテーション」システム
分類1:ジョンの場合分類2:ジャナの場合分類3:ジョシュの場合
・スポーツに興味がある

・インディアナ州在住

・休日はアクティブに過ごす

バスケットボールのゲームソフトをリコメンドする

・ジャナのプロファイル

・PCゲームが好き

・ジャナの使う言語

妖精のゲームソフトをリコメンドする

・ジョシュのプロファイル

・PCゲームが好き

・ジョシュがゲームをする時間

戦闘ゲームソフトをリコメンドする

従来のゲームソフトのターゲットは、単に「ゲームが好きな人」なだけで、どのゲームを好むのか、彼らの住むエリアや言語までは考慮されなかった。
しかし、DCOを使えば、個別にマーケティングを仕掛けることができる。

ジョンはスポーツに興味があり、インディアナ州に在住し、休日をアクティブに過ごすタイプ、とAIは分析する。そして、バスケットボールゲームのソフトをレコメンドするのである。
ジャナやジョシュについては、それぞれの属性(プロファイル)や言語、ゲームで遊ぶ時間などを分析し、妖精やサバイバルのゲームソフトをレコメンドする。

AIにとって「スポーツへの興味」「属性」「言語」「ゲームで遊ぶ時間」などは、最適なゲームソフトを見つけだすトリガー(きっかけ)になる。DCOプラットフォームのAIは、このトリガーを多数用意して最適解を導き出すのだ。

【活用事例】アウトドア用品ブランド「REI」

(HPより抜粋)

REIではDCOを使い、顧客の趣味嗜好、性別、その時の天候に基づいて広告をパーソナライズした。例えば、海の近くに住んでいる人にはサーフィン、雪山のふもとに住んでいる人にはスキー、冒険家にはロッククライミングの道具をそれぞれレコメンドした。
SNSなどに使う広告には、ロッククライミングをするアクティブな女性や、森林にある川でSUPを楽しむ男性の写真を使った。このイメージの選択もAIが行っている。

DCOの将来性

DCOはさらに進化していくだろう。例えば、顧客の行動や購買から「クラスタ」に分類することができる。

先ほどのプレイステーションの事例でいえば、「インディアナ州に住むスポーツ好きの男性」と「プレイステーションのサイトでソフトを閲覧した男性」と似た属性を持つ人たちを同じクラスタに入れるのである。
こうした作業を積み重ねることで、細分化された顧客クラスタをターゲットにしたマーケティングを展開できる。

まとめ

旅行会社のマーケターは、顧客の旅行全般を最適化するソリューションを求めている。そのソリューションは、顧客の属性やニーズに完全にマッチしたものである必要がある。
さらに、オムニチャネル化した高度な消費世界に、メッセージを発し続けるものでなければならない。

Jivox IQプラットフォームは、DCO機能をフル活用してソリューションを提供する。経営者や広告パーソン、マーケターは、AI広告とAIマーケティングの波に乗り遅れないようにしたいものだ。

<参考> ※為替レート: Google Finance 2019年7月末時点