AI Kenya~ケニア東アフリカで活動する今注目のAIコミュニティー~

AIKenyaとは、何なのか?

AIKenyaは2017年10月に設立され、現在3000人以上の会員数のコミュニティーである。AIKenyaは、ケニアと東アフリカで人工知能とデータサイエンスのエコシステムについて話し合い、ネットワークを構築。ケニアのAI促進を目的としている。現在、機械学習とデータサイエンスのスタートアップや研究者を集めて、AIに関するイベント、ワークショップ、およびプロジェクトの展示会などを行っている。

CEO Alfred Ongere

Alfredは、AIと機械学習の豊富な経験を持つ電気通信エンジニア。彼は、Pong Agencies Limitedでプリセールスエンジニアとして働いていた。ジョモケニヤッタ大学にて学士号を取得。また、ニュース、アラート、および救命情報を通じて難民を支援するSMSおよびWebプラットフォームであるSahibuの創設者およびプロジェクトリーダーでもある。

最初にあなたが掲げている「Democratizing Machine Intelligence」について教えていただけますか。

私たちは、一般の人達がさらにAIについて触れる機会を増やしたいと考えています。AI Kenyaのメンバーは、およそ3000人です。そのほとんどが、AIに対しての技術、知識がまだ足りていません。ですので、現在はAIの技術、知識を持った人材を自分たちのコニュニティーから多く排出することに注力しています。その一環として、私たちのWebサイト(website www.Kenya.ai)では、AIについて学ぶことのできる無料プログラムを提供しています。

今現在、ケニアでAIがどのような領域で使われているのかを教えてください。

現在、ケニアではデータの予測分析、人々のクレジットスコアリング、生体認証、チャットボットなどに使用されています。その中で特に活用されている領域は、クレジットスコアリングです。人々は、レンディングサービスからお金を借りる際に、携帯電話のデータをレンディングサービスに提供します。その情報を元に、一個人としてのクレジットスコアが形成され、融資を受けることを可能にしています。素早く融資を受けられることで、ケニア人の多くはレンディングサービスを利用しています。

具体的なサービス活用事例をいくつか教えてください。

Tala、Loan beeなどのレンディングサービスは、顧客の携帯電話の電子マネー取引履歴を分析して、顧客に対してローンを提供しています。その他、SafricomのJitambulisheは、自分の声を登録しておくことで、本人確認を登録した声で行うことを可能としています。その他、Talkliftというサービスは自動分析広告チャットボットを顧客に提供しています。顧客は、このチャットボットを使用して、新規顧客を獲得します。そして、同時に自社のデータを蓄積させ、ターゲット分析ができ、広告の質を高めることを実現しています。

AIを活用、導入するうえで課題となっていることはありますか。

一番の課題は、AIに関する知識、経験のある人材がいないことです。 AIの技術的知識などは、実際自分一人で学ぼうと思っても多少限界があると私は考えています。他の問題として、AI技術者が構築しようとしている複雑なプロジェクトのいくつかをテストするために使用する、コンピューティングパワーの強いコンピューターを見つける必要があります。時に非常に高い計算能力を必要とし、私たちでもアクセスできるローカルGPUサーバーがあればさらに研究、実験、構築のプロセスが素早く進むと考えています。

ケニアのAI技術の受け入れ体制は、他のアフリカ諸国と比べてどのような違いがありますか。

ケニアは、アフリカでもトップクラスにAI技術の活用を促進している国だと最近、オックスフォード大学とその他研究者が言及しています。大統領のウフル・ケニヤッタは、 ‘Big 4’ Agenda,と言われる、政府の今後5年間の4つのセクターをターゲットとした開発計画を掲げています。具体的には、人工知能(AI)、機械学習(ML)、およびロボット工学を食料安全保障、低価格の住宅、製造業および公衆衛生での活用を目指しています。

アフリカの大統領が、今後5年間のマニフェストにAI採用を取り入れようとしたのは、ケニアが初めてであり、それがアフリカの中でAI技術の活用を促進している国として、トップクラスに評価されている要因であると言えます。現状のAI研究とAIを活用している業界の観点から見ると、南アフリカがアフリカ大陸をリードし、ケニアとナイジェリアのどちらかが2番目に続いていると私は思います。

ケニアでさらなるAI活用を促進するために何が必要ですか。

私は、ケニアのそれぞれの業界が協力していくことが重要であると思います。政府、経済界、研究者がお互いに理解し合い、話し合うことです。また、ケニアでCVCを立ち上げている会社、政府機関などのAIスタートアップやAIコミュニティーに積極的に投資を行うことも期待しています。

AIの技術によって人々が得られる恩恵は何だと考えていますか。

AIの利点の一つは、実際にコンピューターで何かを入力しなくても、音楽を聞いたり、何かを調べたりできることです。つまり、ほとんどの作業が簡単になり、誰もが簡単に扱えるということです。自動運転車もその一つと言えるでしょう。私たちは、車に座っているだけで、目的地につくことができるようになります。これらは、世界の人々がより快適に、体の障害などに左右されず、平等に自由に生活することを実現できると私は考えています。

逆に、AIによって人々が苦しめられることとして、何があると思いますか。

AIは、現在の仕事を自動化し、確実に人々から仕事を奪うでしょう。今までのタクシードライバーなどの人は、将来的に仕事を失った時の準備をする必要があります。しかし、人々が、より創造的なことを考え、家族とともに過ごす時間を増やし、自分の趣味を楽しめる時間が増えることも間違いないでしょう。それが、将来的により多くの新しい仕事を生み出していくと私は考えています。

この先の5年間で、あなたはどのようなことに取り組んでいく予定ですか。

今後5年間で、私たちは多くのAIによるイノベーションが起こることを確信しています。アフリカは、特にAIや最先端技術との相性がいいと言われています。なぜなら、インフラや法の規制の問題が、他の国に比べるとたくさん抱えているからです。しかし、私はそれをチャンスだと捉えています。問題解決の手段として、AIや最先端技術が優れていることは間違いありません。

私たちが、これから取り組んでいくことは大きく分けて3つあります。

1.「人」

イノベーションを支えるのは、「人」です。何をするにしても、「人」が主導で行います。ケニアでさらなるイノベーションを促進するために、「イノベーションを起こせる人」を排出することにフォーカスします。

2.「架け橋になること」

それぞれの業界でまだまだ連携不足は深刻であると私は実際に感じます。私たちは、そこのコミュニケーションを円滑に進めるための架け橋となります。イベントやワークショップなどを積極的に開催し、多くの業界を巻き込んでいきます。

3.「常にAIを研究し、知識や経験を深めていくこと」

今は、ヒューマンロボットという領域にフォーカスしていますが、これからさらに他の技術にも焦点を当てていきます。

アフリカ市場に興味を持っている日本企業に伝えたいことはありますか。

私たちの今やっていることは、ケニアでのAI技術の促進に大きく貢献できると信じています。日本の最先端のものづくりの技術とAIに関しての知識は私たちにとって、とても魅力的です。ケニアと日本のそれぞれの利点を生かして、新しいイノベーションを起こせるパートナーを、私たちは探しています。

まとめ

今回、インタビューしたCEOのAlfredからは、大きな情熱を感じた。自ら率先してAIのコミュニティーを作り、自身のエンジニアとしての経験を人々に伝えようとしている。実際にケニアでは、AIに関して学べる機会は圧倒的に少ないのではないか。彼らがイベントやワークショップを開くことで、人々に学ぶ機会を提供することは、本当に価値あるものである。

そして、国が一体となって最先端の技術を積極的に取り入れていこうという姿勢に、アフリカのさらなる発展を感じることができた。

ケニアや、AIkenyaというコミュニティーが、今後どのようにAI技術を活用して発展を遂げていくのかを間近で感じられることに、私はワクワクしている。最後に、私もまだまだ、AIについて詳しいと言えるほど知識、技術も無いので、AIKenyaのWebsiteのプログラムでAIについて学ばせてもらおうと思っている。

実際のイベントの様子

Social robot.  The robot called Furhart

Preben Wik Furhart RobotのCEO

話に聞き入る人達