アフリカの広告を変えるTalkLift ~データ駆逐型チャットボットサービス~

TalkLiftというチャットボットサービスを提供するスタートアップのCEO、Felixにインタビューした。最近、日本でも「会話型広告サービス」がメディアでよく取り上げられるようになってきた。今回は、日本でも流行し始めているチャットボットサービスをアフリカで展開するFelixのAIに対する考え方、展開するビジネスについて詳しく聞いた。

CEO Felix Cheruiyot

Felixは、Kenyatta大学でコンピュータ工学、ソフトウェアを学び、コンピュータテクノロジーの分野で豊富な経験を持つ。

2009年3月から2018年6月まで、Kenya Apps Networkの システム開発チームリーダーとして活躍。また、アパレルデザインの構築とアプリケーションの販売を担当するViralstyle.comのプラットフォームの開発者でもある。

最初に、TalkLiftについて教えてください。

TalkLift(以前はBiasharaBot)は、チャットボットプラットフォームを提供しています。これは、異なるコミュニケーションチャネルから企業と顧客間の会話を管理することを可能にします。

 

また、企業はAIを搭載したチャットボットエンジンを使って、問い合わせに対して即時応答することができるようになります。パーソナライズされたチャットボットを提供することで、カスタマーエクスペリエンスを向上させ、カスタマーの問題に対処します。そして、ソーシャルプラットフォームでセールスキャンペーンを実施し、チャットボットでユーザーの興味をひき、新規顧客の獲得を支援します。

 

主な機能として、チャットボットを介したAIによる販売プロセスの効率化、ソーシャルメディアの自動投稿管理サービス、サービスの支払い統合、店舗注文管理などがあります。

このサービスを始めたきっかけを教えてください。

私自身、企業と顧客の関係に壁があり、不便を感じることが多かったことがきっかけです。例えば、何かのサービスや商品について詳しく知りたい時に、企業のオフィスを訪れるか、電話、メールで聞くなどが必要になってきます。

しかし、メールで問い合わせしてもすぐには返っては来ませんし、電話でもコールセンターはすぐに応答してくれず、保留にされます。

 

そこで、別のアプローチで情報にアクセスできる、課題解決のためのサービスを提供したいと思ったのがきっかけです。

どのような企業がTalkLiftのチャットボットサービスを導入しているのですか?

主に保険業界とサービス業界です。その他、旅行会社、Eコマースといった企業も私たちのサービスを導入しています。

 

導入事例として、今年立ち上がったナイジェリアの保険会社に導入したAIICOEIIaがあります。

Ellaは、顧客はFacebookメッセンジャーで自動車保険、ショッピング保険、旅行保険を購入することができ、支払いやよくある質問(FAQ)に関する情報を、ほんの数秒で提供できます。

サービスを開始した今、直面している課題はありますか?

一番大きな課題は、チャットボットのアイデアを理解してもらうことです。

そして、実際に使ってみて効果があることを納得し、使い続けてもらうことです。

 

私たちは、その課題を解決するために、どんな価値を提供するのかを、専門用語を使わず誰でも分かるように伝えています。

そして、サービスの無料トライアル期間を30日間に設定しています。その期間の中で一定の成果を出してもらうことで、顧客の信頼を得ています。

このサービスを通して、どんなことを実現していきたいですか?

企業のサービスのアクセシビリティを格段に向上させることを実現させたいですね。

 

顧客と企業の間にある壁を無くし、お互いの信頼関係をコミュニケーションによって構築することをサポートする。そうすることで、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、企業のビジネスに貢献したいと考えています。

TalkLift  ロゴ

次に、ケニアでのAI活用の今後について聞かせてください。 ケニアが抱えている問題にAIを活用することで、人々にとってどのようなメリットがありますか?

今、アフリカに欠けているのは、自分たちで使える資源です。次に、情報へのアクセスです。

 

生活、健康、旅行などの分野の企業がAIを活用することで、人々は今よりも多くの情報に自動的にアクセスできるようになり、さらに質の高い生活が送れるようになります。今も情報はたくさん出回ってはいますが、信頼性の低い情報も数多くあります。しかし、AIによって判断されるようになれば、情報の質もクリアになっていくと私は考えています。

この先さらに変化していくアフリカ市場へのAIの導入に関して、企業は何をすべきだと考えますか?

今後10年間で、AIを使った実用的なサービスが出てくるでしょう。「AI」という言葉が単なる流行語ではなくなり、あらゆることが自動化され、効率化が進み、物も増えていくと思います。

 

企業は積極的に、テクノロジー企業と密接な関係を築いていくことが必須になります。そして、既存の考え方に囚われない、柔軟な思考も必要です。パートナーシップから良いシナジーが生まれるとお互いに考えているのであれば、チャレンジすべきです。

チームメンバーが、チャットボットの仕組みを詳しく説明してくれた

あなたはこれからアフリカでどんな存在になり、どんな未来を実現したいですか?

TalkLiftは、情報へのアクセスを望む全ての顧客にとって、便利なサービスになりたいと考えています。企業の広告、問い合わせを全て自動化し、企業の負担を減らせる存在です。

 

そして、非常に複雑な問題でない限り、顧客はコールセンターに電話をする必要がなくなり、チャットボットを通して便利に買い物ができるになっていってほしいと思います。

最後に、アフリカ市場への進出に興味を持つ日本企業にメッセージはありますか?

私が解決したい課題である「企業と顧客の間にある壁」。日本や世界でこの課題に取り組んでいる人たちと、新たなシナジーを協業して作り上げていきたいと考えています。

アフリカ市場が今後さらに発展していくことは、人口統計からみても確実に分かることです。

 

私たちはチャットボットをケニアの企業へ提供していき、信頼を積み重ねることが将来的にも重要であると感じています。

日本でサービス展開している企業は、次の市場を考える時にアフリカに目を向けてほしいと思います。

AIの技術に限らず、アフリカのモバイルマネーの発展は、日本よりも進んでいます。アフリカを、外から見るのと中から見るのではまったく違うと思います。

 

私たちはケニアとナイジェリアで展開しているので、市場について何かを面白い情報を、お伝えすることができるのではないかと思います。

ぜひ一度、アフリカに来てください。

左:Co-founder Moses Kibet 右:CEO Felix Cheruiyot

まとめ

彼らは解決する課題を明確に掲げており、その手段として、チャットボットというサービスを選んだということがインタビューから伝わってきた。例えば現状、チャットボットサービスの価値を企業に理解されていないのと同様に、教育の面でも苦労しているように感じられた。そして今、彼らは既存の導入企業とのコミュニケーションに注力している。UIの向上やどんなサービスを付け加えていくかなど、さらにクオリティを向上させている最中だ。彼らはシリーズAの資金調達を行い、別の市場への展開も計画している。

チャットボットとケニア市場の親和性はすごくいいと思う。なぜなら、家にいる時も、外食する時も、遊ぶ時も、日本よりもスマホが使われているのではないかというくらい、みんながソーシャルメディアを見ている。これは、日本にいた私としては衝撃だった。

ごく近い将来、アフリカのECが発展とともに、オンラインで買い物をすることが当たり前になるだろう。その時、TalkLiftはさらに拡大していくのだと思う。