在アフリカ日系企業の注目度が最も高い3カ国のAIに関する現状と政策

今、人工知能が世界で注目されている。 そして、日本でも間違いなく注目されている。

「日本再興戦略」改訂2015(2015年6月30日閣議決定)では、IoT、ビッグデータ、人工知能による産業構造・就業構造変革の検討が主要施策の一つとして掲げられている。また「第5期科学技術基本計画」(2016年1月22日閣議決定)においても、「「超スマート社会」の実現に向けた共通基盤技術や人材の強化」として、AI等の重点的に取り組むべき技術課題等を明確にし、関係府省の連携の下で戦略的に研究開発を推進することが求められている。

しかし、アフリカの国はどうだろう。人工知能と聞いて、アフリカの国を連想する人は、あまりいない。 長い間、アフリカの国々は戦争、紛争、貧困、病気などの様々な問題に苦しめられてきた。それらは、未だ解決されていない。しかし、アフリカの国々は多くの問題を抱えながらも、明るい未来に向かって国が協力して様々な活動に取り組んでいる。

今回は人工知能(AI)や機械学習(ML)などの革新的技術を最大限活用する為に在アフリカ日系企業の注目度が最も高い、ナイジェリア、南アフリカ、ケニアの3カ国がどのような取り組みをしているのかについて紹介する。

ナイジェリア

アフリカの最も人口の多い国、ナイジェリア。ここでは人工知能分野が少しずつ、確実に熱を帯び始めている。

2018年のDisrupt AfricaのStartup Funding Reportによると、2018年にナイジェリアのスタートアップが外国からのアフリカ大陸のスタートアップ投資の大部分をリードし、様々な分野の58のスタートアップが総額9,490万ドルを調達した。

フィンテックは、現在国内で最も活発な分野だ。波を上げ続けているスタートアップの中には、*PiggyBank、*Paystack、*Farmcrowdy、*Kobo360などがある。

Data Scientists Network Foundationによって運営されている非営利団体であるData Science Nigeriaは、ラゴス大学でナイジェリア初のAI Hubを立ち上げた。AI Hubでは、国内でAIに関する知識教育やスタートアップ 育成を促進している。ディープランニングに焦点を当て、AIのイノベーションとデータ分析の分野で若い才能を発見、育成を奨励している。

近年、ナイジェリア政府は、AIのメリットを活用するためのパートナーシップと利害関係者の関与を促進するための措置も講じている。例えば、ナイジェリアの科学技術省は、ロボットと人工知能の研究のための国家庁(NARRAI)の設立を発表した。

*PiggyBank:オンライン貯蓄&投資プラットフォーム。
*Paystack:Webサイトやモバイルアプリでのモバイルマネーを介した支払いサービス。
*Farmcrowdy:デジタル農業プラットフォーム。改良された種子、農場の管理、近代的な農家教育を提供。
*Kobo360:エンドツーエンドの運搬業務を集約する物流プラットフォーム。

南アフリカ

南アフリカの経済規模は、アフリカの二番目に大きい。

タフツ大学のフレッチャースクールは、Mastercardと共同で、2017年版のDigital Evolution Index(DEI 17)を発表した。Digital Evolution Index(DEI 17)には、インデックスを構成する50カ国におけるデジタルテクノロジーの進化、進捗状況、および課題の評価が書かれている。南アフリカは、33位にランクインしている。その他アフリカの国々は、以下の通り。エジプト(48位)、ケニア(49位)、ナイジェリア(50位)。
南アフリカの成長スピードは、インターネットアクセス、成人の携帯電話普及率86%、そして、発達した電気通信ネットワークに起因していると言われている。

2019年、南アフリカのケープタウンに本拠を置く人工知能(AI)を中心とする持株会社Cortex Groupは、Cortex Venturesを立ち上げた。Cortex Venturesは、シードまたはシリーズAのAIのスタートアップに資金を提供するVCファンドだ。
Cortex Groupは、6つのソリューションを基盤としており、それぞれがスマートエコノミー時代のビジネスの成功を支援するAIソフトウェアを提供している。具体的なスタートアップに支援内容として、同社は、テクニカルアドバイザリー、AIアプリケーション開発、共同スペースの使用などを挙げている。

南アフリカの通商産業省は2017年に、IOT、ビッグデータ、AI、ロボット工学、および新素材を含む新興のデジタル技術の影響を調査するために、Future Industrial Production and Technologies (FIP&T) を設立した。 FIP&Tは、これらのテクノロジー発展に適応してくための政府のテクノロジー組織を構築し、産業界と提携することを目的としている。

ケニア

ケニアはサハラ以南のアフリカのハイテクな国の一つであり、国には、フィンテック、物流、eコマース、ヘルスケアからブロックチェーンアプリケーションまで、最先端の技術を使用している多様なスタートアップが生まれている。

ケニアのデジタル経済は、2006年に発明されたモバイル送金サービス、Mpesaによって大いに推進されてきた。それ以来、Mpesaはケニア経済に深く根付き、大陸と世界全体に広がり続けている。
Mpesaの勢いは、その後も、*Craft Siliconや*Cellulantなどのアフリカ全土にサービス提供するソフトウェア会社を生み出した。

アメリカのシリコンバレーと同じように、ケニアで生まれたイノベーションの多くは、スタートアップコミュニティから生まれている。 2016年現在、郡内には27のイノベーション拠点があり、最も有名なのは、i-Hub、m-Lab、FabLab、NaiLabの各施設だ。iHubは、2010年に設立されて以来170ものスタートアップを立ち上げた。

2009年以来の、ケニアのスタートアップスペースは着実に成長している。ケニアスタートアップスペースの市場規模は約300万Kshs(35,294ドル)から10億シリング(1180万ドル)に成長している。

インキュベーションセンター、アクセラレータのほとんどはケニアの首都に集中している。しかし、近年スタートアップはナイロビからモンバサ、ナクル、キスム、エルドレットなどの他の都市にもネットワークや支援を広げている。

ケニアはまた、以前はアクセスが困難だった教育、エネルギー、健康、人口、貧困、水と衛生に関する情報を市民が利用できるようにするためのオープンデータポータルを立ち上げた最初のアフリカの国でもある。

ケニアのデジタル経済は、世界で4番目に急成長している。(Tufts University Fletcher School of Business 2017年調べ)

ケニアは、テクノロジーインフラの堅牢性が高まってきている。そして、モバイルマネーの発展によるデジタル技術を使用する消費者の能力と意欲は、実際に上昇している。投資魅力指数がアフリカの中でトップであることが示すように、国全体で協力し、外国からの投資を呼び込み、さらなる発展を試みている。

*Craft Silicon:ケニアに本社を置く、モバイルアプリケーション開発会社
*Cellulant:ケニアで設立されたデジタル決済サービスプロバイダー

まとめ

他の大陸と比べると、未だ支援インフラの欠如、AI技術の理解の欠如、AIを推進するための質の高いデータの欠如など課題が多いのが現実だ。多くのアフリカ政府は、AIが雇用を排除し、不平等を増大させ、そして富の独占が進むことを懸念している。しかし、同時にAIの可能性を最大化できるように、政府、国ベースで政策、戦略を立て、未来の変革に適応しようと試みていることがみて取れる。

<参考>