アフリカ大陸に詳しい方であれば一度は聞いたことがあるであろう、リープフロッグ現象。リープフロッグ現象とは、既存の社会インフラが整備されていない新興国において、新しいサービス等の先進国が歩んできた技術進展を飛び越えて一気に広まることだ。アフリカは、社会インフラが他の大陸に比べ圧倒的に整備されていない。だからこそ、その問題をテクノロジーでどのように解決できるか皆が試行錯誤している。
そこで、今回は各セクターにそれらの現状&AI活用事例をご紹介していく。
農業
アフリカ経済の大多数を支えているのが農業である。アフリカ経済の基盤である農業は、テクノロジーを加えることで大きな利益を得ることができ、変革を起こすことのできるセクターだ。
農業部門の雇用は、アフリカ大陸の労働力65%を占めている。国内総生産(GDP)の32%にあたる。 アフリカの最大メディアであるDisrupt Africaによると、ケニア、ナイジェリア、ガーナは現在、アフリカ大陸でトップのアグリテック市場と言われている。アフリカ大陸で活動しているアグテックスタートアップの60%以上が、上記3ヶ国でサービス展開している。
Disrupt Africaのレポートによると、ケニアのアグリテックスタートアップは、2015年から2017年の間に13.77億ドル(1370万ドル)以上の資金を調達した。
2012年、ケニアのソフトウェア会社*Cellulantは、農家のE-Walletへの登録およびシステム検証をするために、ナイジェリア政府と4年間7億4500万Shh(7億4500万ドル)の契約を結んだ。政府は、「農家との種子の補助金のやりとりを直接行えるようにし、問題である汚職を無くす。」と述べている。ナイジェリア政府は、アフリカの慢性的な問題である食糧不足を解決しようと試みている。
*Cellulant ケニアで設立されたデジタル決済サービスプロバイダー
アフリカの小規模農家は、金融サービスにアクセスすることが容易ではない。アフリカの小規模農家の課題として、信用力の構築が挙げられる。ケニアのデータ分析スタートアップであるFarmDriveは、小規模農家の携帯電話の履歴、過去の収穫数値を元に機械学習を利用して、マイクロレンディングサービスを提供する。そして、それと共に小規模農家に対して代替クレジットスコアを提供し、農家が金融アクセスを利用できるためにサポートする。
モバイルベースの食材配達スタートアップであるTwiga Foodsも、AI技術を活用して何千人もの農家の成長をサポートしている。以前は、農家が市場価格を知らずベンダーが不公平な価格で農家から、野菜や果物を買い取っていた。
2014年以来、Twiga Foodsは、さまざまな農産物の完全なサプライチェーンを提供することで、農家とベンダーを公正で信頼できる最新の市場に結び付けている。現時点で、8,370人の農家がTwiga Foodsのサービスを利用している。農家が利用する利点は、保証された市場、透明な価格設定、Twiga Foodsのパートナーから農民へのアドバイスだ。
南部アフリカに位置するスワジランドの小国では、AIの採用はさらに大規模であり、すでに成功を収めている。スワジランドでは、企業によるAI活用が進んでおり、成功を収めている。
1952年に設立されたロイヤルスワジランドシュガーコーポレーション(RSSC)は現在SADC向けに1週間に360万トンのサトウキビを生産する22,000ヘクタールの灌漑サトウキビを操業しており、AIの大きな時間を利用するようになった。
現在、1952年に設立された*RSSC(ロイヤルスワジランドシュガーコーポレーション)はSADC(南部アフリカ開発共同体)やヨーロッパ向けに1シーズンあたり、22,000ヘクタールのサトウキビを生産している。
2014年、RSSCは南アフリカで最初に *Britehouseの専門知識とSAPテクノロジーに業務の合理化とビジネスプロセスの機動性向上を依頼した。
2014年、RSSCは南アフリカで最初にBritehouseの専門知識とSAPテクノロジーを活用し、業務の合理化とビジネスプロセスの機動性向上に成功した。
BritehouseとSAPは、工場トラックのセンサーから地理空間情報システムへのデータ統合に成功し、常にトラックの位置を把握し、運転効率や燃料消費量など輸送運用効率に影響を与える可能性があることを発見した。その結果、RSSCは無駄なリソースを犠牲にすることなくビジネスコストを削減することができた。
RSSCは、AIのテクノロジーを通じて、ビジネスの運用効率を最大化し、競合他社よりも優位性の高い組織を構築することに成功している。
今後数年間にわたり、BritehouseとSAPはエンジニアや農家とのデザイン思考ワークショップを開催し、どの分野でのテクノロジー活用がビジネスへ好影響と投資収益率(ROI)の最大の可能性を秘めているかを実験、検証していくことを試みている。
*RSSC(ロイヤルスワジランドシュガーコーポレーション):スワジランド国内でもっとも大きな企業の一つであり、農業および製造業を主としている。20,000ヘクターを超える2つの土地でサトウキビを栽培し、各シーズンに200万トン以上のさとうきびを2つの砂糖工場に出荷している。
*Britehouse:南アフリカの本拠地を置き、デジタルおよびクラウドベースのサービスをクライアントに提供する会社。
*SAP:ドイツのソフトウェア会社で、企業向けソフトウェアを使用して事業運営や顧客管理のサービスを提供する会社。
金融
アフリカの金融業界は、AIが活用しているセクターだ。
世界の銀行業界は、収益の減少、低成長率だ。しかし、アフリカの銀行市場は、デジタル化とイノベーションによって成長をみせている。今日、顧客はアフリカの銀行の支店ではなく、デジタルチャネルを好む。アメリカの世界的な経営コンサルティング会社であるMcKinsey&Companyが調査したアフリカの銀行業務での取引で顧客の約40%は、デジタルチャネルを使用することを好むと述べている。
2017年、ケニアのStandard Chartered銀行は、コスト削減を実現するために、ホームバンキングサービスを提供する、国内初の銀行となった。
ナイジェリアでは、Zenith銀行がより便利で安全かつ迅速な顧客取引を可能にするいくつかの新しいソリューションを発表した。これには、ZenithおよびZenith以外の顧客がインターネット対応の携帯電話ですばやく応答コードをスキャンしてオンラインおよび店舗内での支払いを行うために使用できる、銀行のスキャン支払いアプリが含まれている。自動化、コスト削減、効率性の向上に関して、AIがアフリカの金融サービスプロバイダーを支援する分野のいくつかは、次のとおり。
マネーロンダリング防止(AML)、リスク分析、顧客管理、顧客満足度の向上。
今後も、アフリカの銀行業界では、AIなどの最先端技術を活用し、分析とデータを活用して効率を高め、コストを削減し、カスタマーエクスペリエンスを向上させることを試みている。
ヘルスケア
アフリカのヘルスケア業界は、専門家の不足や貧弱な医薬品の供給など様々な問題、課題に直面してきた。適切な道路網がなく、遠く離れた農村部の人々は医療サービスへのアクセスも困難だった。 山岳地帯のルワンダでは、3,000マイルの道がありますが、舗装されているのは25%である。農村地域に住むルワンダの地域には、十分な医薬品の配達は困難だ。
2016年に、アメリカのロボット会社*Ziplineとルワンダ政府は、道路状況が悪く医療品を運ぶのに数日かかる地域で、ドローンを使い血液と血漿を運ぶことを合意した。現在ルワンダは、ドローンを使って血液供給を農村の病院に届けている。
2017年に、Ziplineはルワンダの約40倍の面積があり、人口の約70%が農村部に住んでいる、隣のタンザニアにサービス拡大した。2019年、医療用ドローンネットワークをガーナへの拡大することを発表した。ガーナ全土の1,200万人にサービスを提供する2,000以上の医療施設に届けられる予定だ。アフリカの最大の課題である、タイムリーな医療サービスへのアクセスをドローンによって実現しようと試みている。今後10年間でドローンがアフリカの運輸部門の10〜15%を占める可能性があると言われている。
ケニアでは、MyDawaというスタートアップがある。このスタートアップはアフリカの断片的であった、医薬品サプライチェーンをシームレスに結びつけることで解決しようとするデジタル薬局だ。
2018年に、ケニアの薬局と*PPB(Pharmacy & Poisons Board)は、MyDawaに国内で初のオンラインで医薬品を販売するためのライセンスを与えた。
2019年、MyDawaは*Africa HealthCare Master Fundから300万ドルの投資を獲得している。同社は、ケニア又はその他アフリカの国々にサービスを拡大するために資金を使用すると述べている。
*Zipline:カリフォルニアのハーフムーンベイに本社を置き、小型ドローンを設計、製造、運営するアメリカの医療製品配送会社。
*PPB(Pharmacy & Poisons Board):ケニアの法律の第244章を元に設立された薬物規制当局です。当局理事会は、薬局での販売ならびに医薬品および毒物の製造と取引を規制しています。
*Africa HealthCare Master Fund:サブサハラアフリカのヘルスケアスタートアップの投資するファンド。
まとめ
アフリカは、各セクターに、様々問題を抱えている。しかし、それと同じくチャンスも眠っています。現に、各セクターにテクノロジーを活用し、今ある深刻な問題を解決しようとするチャレンジャーがアフリカには外国人含めたくさんいる。AIは、その問題解決の手助けになる可能性を持っている。これからさらに各セクターのAI活用が増えていくと確信している。