GupShupの概要
チャットボットとは、人間のユーザーとチャットができるAI(人工知能)を搭載したロボットだ。GupShupのチャットボットは、コミュニケーションツールのプラットフォームであり、マーケティングツールでもある。
GupShupが提供するソリューションは、すでに次世代の「顧客管理システム」「潜在顧客の開拓ツール」として認知されていて、世界で36,000社が導入している。
AIは単純作業の担い手として各業界で活用が広がっている。GupShupの共同創設者でありCEOのBeerud Sheth氏は「この流れは歓迎できる」と話し、その理由をこう説明している。
単純作業はビジネスパーソンのストレス要因である。そして顧客対応の大部分も単純作業であり、ストレスを生む作業だ。AIが、これまでビジネスパーソンが担ってきた顧客対応を代行すれば、経営者は人材をより戦略的な事業に振り分けることができる。
シリコンバレーに本社を置くGupShupは、チャットボット業界に限っていえば、グーグルやFacebook、マイクロソフトといったハイテクの巨人と肩を並べる存在だ。世界のチャットボット業界の市場規模は2022年までに約18億ドルに達するとされ、GupShupは大きなシェアを勝ち取るだろう。
Gupshupは元々、インドのSMS送信サービスの会社だった。いまでもSMS送信サービスは同社の大きな収入源になっている。例えば、多くの銀行や、ウーバー(Uber)のような配車サービス企業がGupshupのSMS送信サービスを利用している。
2014年ごろまでは、Gupshupの顧客企業は、Gupshupのチャットボットをメッセージングサービスの進化版と考えていた。そして今、Gupshupは、デジタル技術を必要とするあらゆるビジネスにソリューションを提供するまでに成長した。
Gupshupはビジネス向けチャットボットを開発する一方で、ユビキタスサービスを手掛ける企業へと成長することを目指している。ユビキタスとは、あらゆるものにコンピュータが内蔵され、いつでもハイテク技術の支援が受けられる世界のことである。モノのネット化であるIoTもユビキタスの一種だ。
Gupshupは、大企業だけでなくベンチャー企業にもチャットボット・プラットフォームを提供している。
Gupshupのチャットボットは、単一のAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で、30以上のチャンネルで会話ができる。チャットボットによってビジネス上の会話を自動化できれば、次の「3つのこと」が実現するので、企業はさらに成長できるはずだ。
1.チャットボットの活用は、マーケティングをAIで強化することに他ならない。企業のマーケティングの洞察力が深まり、顧客の獲得や顧客との接触機会の創出が容易になる。したがってマーケティングのROI(投資収益率)は格段に向上する。
2.顧客との会話を各種のトランザクションに変換できるので、売上増も期待できる。
3.チャットボットは顧客の疑問に迅速かつ正確に答えることができるので、顧客満足度を高めることになる。つまりチャットボットは企業の顧客サポート体制を強化する。
Gupshupは今や、Facebook、ツイッター、WhatsApp、グーグル、Cisco、LinkedIn、ユニリーバ、シティバンク、HSBC、Xiaomi、ケロッグを含む36,900社が参画している業界のリーダーとみなされている。
(Cupshupホームページより参照)
Gupshupによると、Cupshupの企業向けメッセージング・ビジネスにおいて、毎月45億件のメッセージを処理し、累計処理数は2,250億件を超える。
GupshupはシリーズEの投資資金を4,700万ドル獲得している。出資者にはTenaya Capital、Helion Venture Partners、Charles River Ventures、Globespan Capital Partnersが名を連ねる。
2014~18年のGupshupの年平均成長率(CAGR)は75%以上に達する。インドでのA2P(アプリケーションtoパーソン)メッセージング市場の40%のシェアを握り、その事業規模は1.4億ドル。この事業は2018年に、7,200万ドルの利益をGupshupにもたらした。
今後、チャットボット市場が拡大するのは確実で、同社は2023年までに毎年25~30%の成長率を維持すると見込んでいる。
将来の展望
ある調査によると、企業などがチャットボットにかける開発費は、2021年までに現行のアプリの開発費の50%増となる。
チャットボット・アプリはBtoCビジネスを展開している銀行、金融、保険、人事、教育、ファッションなどに普及するだろう。
Gupshupは2016年に、顧客対策に力を入れている企業向けサービスとして、AIとML(マシンラーニング、機械学習)を搭載した進化形チャットボット「guspshup.io」を開発した。
guspshup.ioをいち早く導入したのは、ICICI銀行、HDFC銀行、Yes銀行といった金融機関だ。顧客からの銀行への問い合わせの多くは、金融商品や金融サービスに関する質問で、それらはいずれも「構造化した会話」で回答できる。構造化した会話とは、定型文のようなものだ。定型文の内容を顧客に答えるだけなら、何も人間がやる必要がない。最適な定型文を選んで顧客に回答する仕事は、チャットボットが得意とするところだ。
ただGupshupは「構造化した会話」だけで満足しているわけではない。より複雑な「非構造化会話」ができるシステム開発に乗り出している。そして自然言語処理(NLP)技術を使ったアプリやWebサービスはまだまだ使いにくさがあるが、Gupshupはより直感的に操作できるシステムにしようとしている。
メジャーなSNSのチャットにも対応できるチャットボット開発プラットフォーム
Gupshupは開発者向けに、「IDE Bot Builder」というクラウド型プラットフォームを提供している。「Flow Bot Builder」は、使いやすさに重点を置いたインターフェースと会話型フローチャートにより、技術力がそれほど高くない開発者でも簡単に使いこなすことができる。
IDE Bot Builderの使い方を説明した動画を抜粋して説明する。(https://www.youtube.com/watch?v=VQXqZuKMSe4)
1.まず、IDE Bot Builderのプラットフォームでユーザーから想定される質問をコードで入力し、その回答もコードで反映する。
(You Tube: IDE Bot Builderより抜粋)
2.IDE Bot Builderで入力したデータがきちんと反映されているか、テストを行う。この場合はユーザーが「hi」と入力した場合には、「Hello there!!」とボットが回答している。
(YouTube: IDE Bot Builderより抜粋)
3.そのチャットボットの機能がどのチャネルで利用させるかを選択し、反映する。Slack、Facebook、 Messenger、Telegramなど多くのSNSにも対応している。分析する事もクラウドのダッシュボードで管理する事ができる。
(You Tube: IDE Bot Builderより抜粋)
企業は開発したアプリを大々的に展開したり、公開したり、貸し出したり、モニタリングしたり、分析したりしなければならないが、Gupshupはそれらを一括してサポートすることができる。
Gupshupのこうしたサービスを利用した企業は、顧客戦略を合理化することができる。
また、Gupshupのサービスの利用は、顧客戦略の合理化だけでなく、企業のマーケティング機能も向上させるだろう。
高度なデータ分析により、顧客1人ひとりにマッチした個別メッセージを送ることができる。その結果、顧客の商品体験やサービス体験は質的に向上する。顧客体験体験の向上は、商品販売の増加に直結する。
チャットボットは今、インテリジェンス・チャットボットに進化した。それぞれの顧客の購入履歴から、その顧客が求めそうな情報や特典を選択して送信することができるので、顧客は必要な商品を容易に探すことができる。
NLPはビジネスに変革をもたらす
Gupshupの「NLP on the fly」は、トレーニングが要らないNLP(自然言語処理)プラットフォームである。
なぜトレーニングが不要かというと、1)膨大な量の一般知識、2)自由検索機能、3)インテント抽出、4)エンティティ抽出が最初から搭載されているからだ。
インテントとは、ユーザーが発した音声がどのような意図を持っているかを抽出する機能のことであり、エンティティとは、音声のなかの意味のある単語を抽出する機能だ。
ある意図を持ってクエリを実行すれば、「NLP on the fly」がその意図を察知して必要な分類を自動で行う。したがって、専門的な開発者知識がなくても「NLP on the fly」を使えば、どの企業でも短期間で高度なNLP型チャットボットを開発することができるのだ。
Gupshupの公式サイトによると、「NLP on the fly」は開発者の意のままに動かすことができる。
開発者は、まず、インテントもエンティティも含まれていないJavaScript Object Notation (JSON)をつくる。例えば、チャットボットに5つのインテントと10のバリエーションを持たせるには、JSONに50のバリエーションを含める必要がある。これは、開発者がJSONに入力しなければならない。
このJSONは、ユーザーがチャットボットにどのような文章を入力しても変わらない。そして「NLP on the fly」は、開発者が指定した文字群のなかから、ユーザーが入力した文章と最も一致度が高い文章を探す。一致度は「maxIntentScore」というパラメーターで表示される。一致点がみつかると「NLP on the fly」はさらに、ユーザーが求めるエンティティ(意味のある言葉)も抽出する。
チャンスが広がるチャットボット
チャットボットのguspshup.ioは、Facebook、グーグル、ツイッター、スカイプ、Telegram、WeChat、Slack、Hipchat、Twillio、Lineなど、あらゆるSNSに接続することができる。またVoIPとの相性も良好だ。
こうした機能が評価され、例えばWhatsApp社が機能統合を許可しているAPI企業は5社にすぎないが、Gupshupはその1社である。
Gupshupは、コード編集に関するソリューションや出版物、テストシステムなど、チャットボットに関するあらゆるサービスを提供している。特にコード編集の性能でいえば、他社製品をはるかに上回る。
guspshup.ioでは、ライブラリとパッケージのインストールも容易だ。したがって開発者は、3~4ステップでチャットボットを立ち上げることができる。
guspshup.ioは「チャットボットを導入するには多額の投資が必要である」という常識を完全に覆したといえる。
さらにGupshupは、企業がチャットボット・サービスを提供するときに必要な、安全なサーバーも提供している。そして、企業のプログラマーは自由にチャットボットを自社仕様にしていくことができる。
guspshup.ioはアマゾンのクラウドアプリプラットフォームの「AWS Lambda」を使って開発していて、Facebook、MessengerやTelegram、Slackを使っている開発者は、シミュレーションを試すことができる。
Gupshupのスマート・メッセージサービスは、構造化されたデータとAIをベースにしているので画像認識や高度なメッセージングが可能だ。ユーザー企業のマーケティングは格段の進歩を遂げるはずだ。
まとめ
企業がGupshupのスマートメッセージング・プラットフォームを使えば、成果をあげられるだけでなく、事業を拡大させることもできる。だからこそGupshupは、市場をつかみ驚異的な成長を遂げることができた。これからの5年間でAIはよりスマートになり、自律的に動くようになるだろう。
AIはこれまで以上に企業のマーケティングに貢献し、顧客とのエンゲージメントを高める。