イスラエルの医療系AIスタートアップまとめ

GAFAをはじめとするグローバルIT企業の巨人達がAIファーストを掲げるようになり、時代の技術的傾向がAIをベースとしたプロダクト・サービス開発が当たり前になってきている中、イスラエルでも同様の傾向が見られる。

Start-up Nation Centralによると、2018年にはイスラエルのスタートアップや企業は681回の資金調達ラウンドで60億ドル以上を調達し、2017年から15%増(52億ドル)、2014年から140%増となった。2018年の総資金調達額の、37%を占める22億4,000万ドルがAI関連企業に投資され、2014年比で3倍の増加となり、爆発的な成長を遂げている。

2017年にはイスラエルを代表するAI・自動運転企業であるMobileyeがIntelに153億ドルで買収され、イスラエル企業のこれまでのディールの中で最大額を記録した。2018年にはIntelとイスラエル工科大学による人工知能センターの新設。今年3月には、米国の技術大手NvidiaによるイスラエルのチップメーカーのMellanox Technologiesの69億ドルでの買収に伴い、国内での新しいAI研究センターを開設していたことは記憶に新しい。このように、イスラエルではAI技術を開発応用している大規模で成長しているスタートアップたちはエコシステムの中でも最大のクラスターだ。

ヘルスケア領域でもこの傾向は顕著に見られ、AIを技術や事業に取り入れる企業が増えてきた。

今回は、医療・ヘルスケア領域に取り組む、もしくは応用されているイスラエルAIスタートアップをまとめていく。

イスラエルAIスタートアップ7選

Zebra Medical Vision

2014年設立、拠点はShefayim, Israel 。3ラウンドで計$50Mの資金調達。直近では2016年1月にシリーズAで$11M資金調達。

Zebra Medical Visionは2014年に設立され、11つのアルゴリズムを開発してきた。それぞれのアルゴリズムは既に診断されラベルづけされた疾病の数千枚もの医療スキャン画像を元に視覚的情報を処理し該当する病気を特定するように訓練されている。新たなスキャン画像を提示された際にアルゴリズムは視覚的手がかりを元に疾患が現存するかを判断する。

OurCrowd Summitにてインドの病院とパートナーシップ締結を発表したZebra CEO Eyal氏

現在、乳がん、椎骨骨折、骨粗鬆症、脂肪肝、動脈瘤、そして脳出血を探知することが出来る。2017年12月には、Zebraは医療スキャナ領域においてGoogleとの提携を発表をした。

OrCam

2010年設立、拠点はJerusalem, Israel 。6ラウンドで計$129Mの資金調達。直近では2018年1月にベンチャーラウンドで$30M資金調達。

盲目、視力が著しく低下した人、失読症、失語症などの人に向けたビジュアルアシスタントスマートグラス。今年3月にIntelにより買収が発表されたMobileyeのCTO Amnon Shashuaがco-founderを努める。

視界にある文字をタッチもしくは指差しすると、それらをめがねに付けられたカメラが認識し、音声で読み上げてくれる。認識不可能なものはモードを変更し、デバイスに学習させることも可能。

2018年2月には、OrCam Technologiesの評価額が10億ドルであるユニコーン企業入りし、現在はIPOを目指している。イスラエルのスタートアップを調べているとシリアル起業家が多い印象を受けるが、その中でも特にMobileyeからは良質な起業家がたくさん生まれている。イスラエルスタートアップエコシステムのいい例。

Neura

2013年設立、拠点はHerzliya, Israel 。4ラウンドで計$13.02Mの資金調達。直近では2016年1月にシリーズAで$11M資金調達。

B2B向けAIプラットフォーム。ユーザーによってアプリケーションをパーソナライズすることに特化しており、ユーザーの日常の反応や生活習慣やライフスタイルを学習し、ユーザーが一番好む時間帯やニーズを提案する。人に焦点を当てているのが特徴。

現在の顧客は医療系モバイルサービスのスタートアップが多い。例えば、後述するvaicaは処方された通りに薬を服用できるように自動的にアラートしてくれるデバイスを製作している。また、Hello Heartは血圧や心拍数をトラックしてコーチングを受けたりすることができる。

これらのシステム構築にNeuraのAIが活躍しており、医療系の企業におけるAIシステムの導入に親和性が高いようである。

詳しい動画はこちら→ https://youtu.be/fmVlxa_fXQA

Vaica Medical

2007年設立、拠点はTel Aviv , Israel 。

Vaica Medicalは、医薬品の処方箋順守と遠隔医療のインフラストラクチャソリューションを開発し、販売しているスタートアップ。 経口ピルや注射剤、冷蔵薬など、幅広い種類の薬剤送達用スマート薬物ディスペンサーを開発提供している。

クラウドベースの患者管理および監視サービスは、内蔵GSMユニットを介してディスペンサーに接続し、介護プロバイダーがサービスを管理、監視、および管理できるようにしている。各ディスペンサーは、モニターの大規模なアレイからバイタルサインの読み取り値を収集しアップロードすることができ、介護者に遠隔患者のテレヘルスサービスの展開と管理のための包括的なITプラットフォームを提供。 この際、前述のNeuraのAIプラットフォームを使用している。2017年には新製品のディスペンサーを発表した。

詳しい動画はこちら→ https://youtu.be/lUqJpuKe4vQ

Crosswise

2013年設立、拠点はTel Aviv, Israel 。2ラウンドで計$5Mの資金調達。2016年4月にオラクルに買収された。

Crosswiseは、ユーザーのデバイスがどこで使用されているかを可視化した最も信頼性のマップを、広告業者、メーカー、出版社などに提供している。 Crosswiseは、データサイエンス、ビッグデータと機械学習を組み合わせることで、消費者が使用するPC、電話、タブレット、デジタルテレビ、その他の接続デバイスを特定しマッピングすることを実現した。これらのデータは各デバイスに対するターゲティング広告、コンテンツパーソナライゼーション、および引用や分析のために活用される場合、現段階では未開拓のビジネスポテンシャルの巨大な源泉となりうるかもしれない。

遠隔医療の現場でもこのレベルでの監視が行われる可能性が大いにあると思われ選出させていただいた。

ここからは続けて、B向けのAIによるビジネスソリューションを提供しているスタートアップ二社

Parallel Machines

2014年設立、拠点はTel Aviv, Israel 。2ラウンドで計$5Mの資金調達。資金関係の情報は不明。

重要なイベントやデータの予測と検出を可能にするアプリケーションまたはサービス。分散データ、計算資産、相互接続された機械学習およびディープラーニングアプリケーションと、包括的な管理機能およびビジネスインターフェイスを結合する新しいインテリジェンス管理パラダイム、「Intelligence Overlay Network」(ION)を作成。PMを使用することで、オペレーションは複雑なIONの生産を容易に管理することができる。ヒューマンインタラクションやビジネスコンテキストのために設計された包括的な管理機能により、エッジ/クラウドとオープンソースツールにまたがることができる。

SparkBeyond

2013年設立、拠点はNatanya, Israel。その他にもロンドン、シンガポール、NYCにも拠点がある。資金関係の情報は不明。

SparkBeyondはAI機能を備えたリサーチエンジンを構築し、データの意味を理解してデータの複雑なパターンを見つけることができる。データサイエンスと人工知能を活用した機械学習技術を備えたプラットフォームは、財務、製造、ライフサイエンス、エネルギー、eコマース、インターネット、ヘルスケアなどさまざまな業界の企業に導入されている。

データセットに対して仮説的な結果を手動でテストする代わりに、測定可能なビジネス目標を念頭に置いて最適な予測モデルを構築するために、膨大な量のデータをスキャンし、定式化、方程式、感情、場所の範囲で選別する。データが変化すると、モデルは適応機械学習アルゴリズムを使用して適応する。

※本記事はIsrael Medtech Postより転載しております。