【インタビュー】イスラエル発スタートアップのCEOに聞く、3Dコンテンツの影響とECの今後

Atias氏が何を学んでこられたのかと自身のキャリアについて、そして、3Dイメージングに関する会社を始めるまでの経緯について教えてください。

私は33歳(2019年5月時点)で、3人の子どもの父です。日本ではあまり存在の知られていないOpen Universityという通信制の大学で学位を取得しました。兵役を終えてすぐの2007年にビジネスマネジメントを始め、学位を取得し終わる頃には2つの企業を立ち上げていました。

最初から3Dイメージングの会社を始めようと思ってHexaを起業したわけではありません。実は、バーチャルの試着サービスを提供する会社として始めたのです。軍にいた頃の知り合いに、「面白いプロジェクトを始めるから一緒にやらないか」と誘われたのがきっかけです。そのプロジェクトは、バーチャルの試着サービスのために2つのエンジンを開発するスタートアップでした。

2つのエンジンのうち1つは、ボディサイズの計測と、実際に3D衣服をボディに着せる作業などを行うエンジンでした。そしてもう1つは、実際に3D衣服を創り出すエンジンです。その2つ目のエンジンが、私たちが開発したものです。

バーチャルでの試着は適合性の問題であり、サイズの問題ではありません。そのため、視覚的な方法で売られなければならず、3Dの買い物客や衣服を製作せねばなりません。3Dアバターの業界は発展している一方、3D衣服を製作する技術はあまり進んでいません。これまで3D衣服のコンテンツを1つも持たない大手企業に、数多く会ってきました。彼らはスケッチやデザインなどを全てマニュアルで行うため、全ての手順を2Dで行っていました。それをきっかけに、1年後、私たちは共通作成エンジンに注力することにしたのです。

Hexaのプロダクトの特徴と、他の競合技術とどこが異なるのか教えていただけますか?

そもそも、モノを3Dアセットに再構築する技術はそれほどありません。我々の競合技術の大半は、写真測量技術かスキャニング技術です。両方とも再構築する対象の物質が物理的に手に触れる範囲内になければならない技術です。

そういった意味で、私たちの技術はユニークです。私たちはパートナーである小売業に対し、視覚化のフローの中で、何1つ変更を求めません。再構築する対象のモノが実際に手元になくてもよく、そのイメージやスケッチなど、彼らの手元にあるものを何でも送ってもらえれば、3Dアセットに再構築できるのです。

この業界はとてつもない速度で発展しています。AR(拡張現実)の業界ではApple社とGoogle社がリードしており、彼らのキットを使って3Dオブジェクトを拡張したり、ARを読み込んだりすることが可能です。今は一般のブラウザから、彼らの技術を使うことが可能なので、特別なアプリなども必要ありません。それによって今後何万人ものカスタマーに利用されることが予測されており、とても楽しみに思っています。

一方で、3Dコンテンツの作成プロセスがマニュアルで行われ、時間とコストがかかる事実は未だに変わりません。プロのクリエイターしか3Dコンテンツを作成できず、VR(仮想現実)マーケットに進出しようとしている多くの企業が3Dコンテンツを利用できない状態でいます。多くの企業が3Dコンテンツの事例を加速度的に生み出すことで、コンテンツの価値がどんどん上がっていく一方、コンテンツを作ること自体にはまだ発展の余地があります。私たちはその後者に注力し、3Dアセットの作成にかかる時間とコストを大幅に削減することを目指しています。

H&MやMacy’sなど、何万もの商品を抱える大手アパレル企業と働くときに一番重要なのは、大量の3Dコンテンツを製作することです。また、商品の移り変わりがとても激しいので、非常に短い期間に3Dコンテンツの価値を最大限に引き出さす必要があります。だからこそ、3Dコンテンツの製作はとても効率を意識しながら行わなければなりません。

小売業者がデザインやスケッチをマニュアルで行う一方で、私たちはそのスケッチを3Dアセットに変換しています。例えば、椅子のイメージを作る際、完全にバーチャルに作ることができ、それを何千ものタイプの異なる部屋に置くことができます。プロダクトを可視化するだけのために物理的に部屋をつくり、そこに椅子を置く必要がありません。

トップ・ファネルのユースケースとしては、3Dアセットを実体験として提供することで、新しい顧客を開拓できることが挙げられます。もう間もなく、FacebookやGoogleがARの広告を展開し始めるでしょう。そうなれば、例えば椅子の広告をFacebookで見たときに、その広告をクリックすれば、椅子が自分の部屋の中にあるように見えるようになります。このような戦略は3Dアセットの価値を最大化し、必然的に小売業者は3Dアセットにより多くの投資を始めるでしょう。

しかしながら、一定の自動化なしでは空間中で商品を計測するのは難しいため、製造のパイプラインは完璧でなければいけません。何百ものスタジオや人材を採用し、管理し、使用する必要があります。それでも需要に追いつくのが精一杯です。だからこそ私たちは、巨大なデータセットを構築し、3Dコンテンツ製作の自動化を目指します。私たちは2019年の終わりには3,000以上の3D人材やスタジオを採用し、世界最大の可視化プラットフォームになり、毎月何万ものモデルを製作する予定です。大企業が製作プロセスを自動化しようとする一方で、巨大なデータセットを先に構築しようとしているという面で私たちのアプローチは異なると思います。

Hexaの3Dイメージング技術における、AIの役割とは何ですか?

使用しているAIはとても基礎的なもので、関連するデータを使い、3Dクリエイターのすることを自動化するためにはどのような情報をどうやって集めるべきかを推測し、彼らの作業を再現します。Uber社が彼らのネットワークを使って、独自の自動運転車を開発しているのと非常に似ています。私たちは3D人材を使い、ほぼ同じことを行っています。自動化を促進するために必要なデータセットを構築しているのです。

3Dアセットのアウトプットの真似をするように我々の神経網を訓練しています。インプットは大抵2Dの画像とプライベートデータで、アウトプットが3Dアセットになります。そのプロセスを一定回数行うと、そのプロセスの一部を自動化し始めることができます。システムに追加されるアセットごとに神経網は学習し、より速く、正確になります。

繰り返しになりますが、私たちのアプローチは独自です。私たちのゴールは、どんなものも3Dアセットに変換することです。その目標を達成するために、どうしていくべきかを考えた唯一の方法が、良質なデータを誰よりも速く、コストなしで構築することでした。自分たちで費用を捻出しなくていいように、私たちの3Dアセットに対し対価を支払ってくれる人がいるぐらいの価値を生み出す方法を探したのです。現在の我々への投資家は研究開発に投資しており、プラットフォーム自体は私たちで費用をまかなっています。

広告やマーケティングにおいて、ECビジネスは今後どうなっていくと思いますか?

広告とマーケティングはECビジネスのほんの一部にすぎないと思います。すぐに全ての衣服を試着できるバーチャルモデルは市場に出るでしょう。在庫を調整できるように、小売業者はまだ製造されていない製品を販売する、フリーコマースも始まると思います。また、多くのAR広告も目するようになるでしょう。

これらのコンテンツにより、新しいコミュニケーションの形が生まれるはずです。3Dコンテンツの製作プロセスが終わり、すべての小売業者が独自の3Dコンテンツの製作パイプラインを持つようになれば、3Dアセットの価値は莫大になるでしょう。GoogleやFacebookなどの会社はもっと多様なジャンルの広告使い、例えばもしAppleが新しい商品を発表したら、GoogleやFacebookが広告の分配ラインを握り、3D広告の分配とそれらの広告を見たい、実際の購入客の間を繋ぐことになるでしょう。

日系企業と仕事をする中で、AIやデジタルテクノロジーにおいて、イスラエル企業との違いなど、何か気づくことはありますか?

技術力、また、テクノロジーに対するアプローチにおいて、日本と他の国の企業の間にはとても大きな違いがあると思います。サムライインキュベートという会社が、かなり早い段階で我々に投資した影響で、日本のマーケットについて詳しく知っており、とても保守的だと思います。主に言語の壁により、日本のプレイヤーを理解するのが難しく、マーケットへの参入がとても困難なのです。海外から日本のカスタマー心理を読むことも難しいです。

日本では、信頼関係や文化の理解をせず、現地にチームを作ったり、代理人を雇ったりすることができません。だからこそ、日本のマーケットはとても大きいのに、最新の技術は日本で取り入れられにくく、そのほとんどが、コミュニケーションがより容易なアメリカに行くのです。

現在の文化は新しい技術が日本に到達することを妨げている一方で、技術の国際化から日本のテックプロバイダーを保護しています。つまり、良くも悪くもあるのです。日本のスタートアップやテック系の企業にとっては良い一方で、海外の企業が日本のマーケットに進出しようとすると、多額の出資が必要になるため、国の経済全体からすると悪影響にす。私も何度も日本に進出しようと試みましたが、うまく行きませんでした。日本企業は最新の技術をもつ海外企業と働くよりも、少し技術が劣ってたとしても、同じ日本語を話し、一緒に飲みに行けるようなパートナー企業を好みます。それが一番の違いだと思います。