人工知能と機械学習に説明責任をもたらす企業、BasisAIとは何なのか?彼らが大きな注目を集める理由とは?

シンガポールを拠点とするBasisAIは、組織がデータプロジェクトを拡張し、AIおよび機械学習プラットフォーム自体に説明責任を持たせることを支援するスタートアップである。

デジタル時代に入り、AI(人工知能)とML(機械学習)のない世界は考えられなくなってきている。さまざまな業界がAIの動きに着目し、自社に取り入れようとする中で、目標を定義し、利害関係者の理解を得て、そのビジョンに向けたプロセスを構築することはより一層重要になってきている。しかしその前に、まずAIの可能性を理解することが重要だ。

このデジタル変革時代において、最も重要な点の一つは、AI主導による説明責任と拡張性だ。なぜそれが重要かという点には、様々な理由がある。例えば、AIがどのように活用でき、企業に対してどんな価値を産み出すのかを利害関係者に説明しなくてはならなかったり、日々目まぐるしく変わるマーケットを軸にプロジェクト自体を柔軟に拡張していく必要があったりということが挙げられる。また、AIシステムによってもたらされる結果を元に、ビジネスの意思決定自体を最適化し、事業を加速させる必要があるのだ。上にあげたような、情報の最適利用・価値の見える化・ビジネス上の意思決定の最適化こそが、まさに、今回紹介するスタートアップBasisAIがやろうとしていることである。

BasisAIの主な特徴を解説

BasisAIが現在掲げている目標は、かなり的を絞った課題を解決することである。それはFinTechとインターネット企業がデータプロジェクトを拡大していくことを助けることであり、それと同時に、AIとMLのプラットフォーム自体に説明責任と透明性を持たせていきたいと考えている。製品志向かつ顧客中心の会社であるBasisAIは、企業が成長速度をあげ、個別化された顧客エクスペリエンスを創造しつつ、リスク管理ができるよう支援している。

BasisAIによると、同社独自のAIプラットフォームにより、クライアントはモデルをシームレスかつ安全に展開したうえで、データの出所や履歴を追跡し、アルゴリズムの整合性を監視することでAIの説明性を保証できるという。説明性の保証とは、AIプラットフォーム内の動作が組織内の関係者でも容易に理解することができる事を保証することを指す。これは、必要に応じてトラブルシューティングを行い、その知識をより大規模な運用に活用するために重要になってくる。これから彼らのサービスの3つの特徴を紹介する。

成長を支える

彼らのサービスを使って、顧客が何を本当に望んでいるのかを理解するところから始める。 AIの力を使用して、異なる顧客セグメントの動向を把握することができる。これは、顧客の行動のパターンを認識し、顧客自体を増やすことや、顧客との関わりを深め、関係性を維持することに貢献できる。BasisAIを使えば、データを分析して自社の顧客が気に入っているかどうかを確認できるため、企業は商品のアップセルやクロスセルを提案することができる。それにより販売を促進することや、会社の成長を後押しするために価格設定を最適化するのを手助けすることも可能になる。

カスタマーエクスペリエンスの向上

更に、BasisAIの提供するプラットフォームは、より細かくパーソナライズした対応を企業が顧客に対し提供することを可能にするため、高い顧客満足度が期待できる。具体的には、顧客とのシームレスなサポートの場を提供しながら、先を見越した課題を見つけ出し、そこに対するアドバイスを提示してくれるのだ。

リスク管理

最後に、その予測アルゴリズムは顧客および顧客と日々発生する様々なやりとりを正しく評価することができる。これにより、不正は迅速かつ確実に軽減され、複雑なリスクを管理することができるのだ。 彼らのAIプラットフォームには、機械学習モデルの最適化と、それ自体の根拠を説明可能にするツールが搭載されている。

BasisAIを立ち上げた3人に集まる大きな期待

優秀な3名のシンガポール人によって立ち上げられたBasisAIは、これまであまり目立つことなく動いていたが、2019年初めに大きく注目されることになった。それは業界の先駆者であるTemasekとSequoia Indiaから600万米ドルのシードファンドを受け取ったというニュースが発表されたためである。知名度の高いVCからの調達を得て、彼らのサービスは順調に立ち上がり、業界から注目を集めることになった。Sequoia Indiaは初期フェーズ(シード時期)のスタートアップに投資することで知られていたが、興味深いのはシンガポールの政府系ファンドであるTemasekから調達を得たことである。Temasekは通常レーターステージのスタートアップに投資しており、初期フェーズであるBasisAIへの投資は、彼らの可能性の大きさを示していると言えるだろう。

スタンフォード大学出身の双子、LinusとSilvanus Leeが、Oxfordの卒業生のLiu-Feng-Yuanと共にBasisAIを立ち上げた。双子の兄弟達は元々シリコンバレーで働いており、そこで大きな経験を積んだ後シンガポールに戻っている。 Linusは6年間Twitter社でデータサイエンティストとしてAPACのチームを率いていた。そして、SilvanusはDropboxとUberでデータサイエンスのディレクターとして働いていた。一方、Liuは、シンガポールの陸上交通省とGovTech Singaporeにて勤務しており、シンガポール政府とさまざまな面で協力してきた経歴の持ち主だ。

BasisAIについて現在わかっていること

BasisAIは2018年9月にローンチし、2019年1月に大きな調達のニュースが取り上げられたことで突然注目されたが、彼らのサービス内容についての詳細はそれほど多くないのが現状である。そんな中BasisAIは、既に試験導入をしているクライアントがいることを明らかにした。彼らはまず東南アジアで大きな可能性を秘めているマーケットであるFinTechと消費者向けのインターネット業界にフォーカスしていくようである。

彼らはシリコンバレーで働いた後、マーケットにおいて彼らがイノベーションを起こせる分野があると感じてシンガポールに戻りBasisAIを立ち上げることにした。彼らはまた、政府のディープテックエコシステムの更なる発展にも貢献したいと考えている。

2019年1月のメディアインタビューで彼らの投資家の一人は、創業チームがグローバルなデータサイエンスチームの一員であったことと、説明責任をAIにもたらすという革新的な考えがBasisAIを支持する主な理由であることを明らかにした。彼はまたBisisAIには潜在的な顧客のパイプラインが既にある中で、まずは少数の主要な顧客に絞り込んで提供するところからスタートしていると明かしている。

BasisAIチームは、創設者と数人の機械学習およびソフトウェアエンジニアで構成される少数精鋭チームである。同社のWebサイトによると、現在ソフトウェアエンジニア、データサイエンティスト、および機械学習エンジニアの採用を検討している。また、その事業部門を強化したいと考えており、事業戦略およびオペレーションのエキスパートを探している。

BassAIの今後

このスタートアップは、最初の顧客を獲得する前からかなりの注目を集めている。彼らのアイデアは革命的だが、問題は、それが現実の世界で実現できるのかどうかということである。現状は、AIプラットフォームに説明責任をもたらすと共に、AIのとらえどころのない世界について理解を深める上で、BasisAIの可能性に大きな期待が集まっていることは間違いない。今後も彼らのサービスの状況から目が離せないだろう。

BassAIの企業情報

創業者: Ivy League graduates Liu Feng-Yuan (Cofounder and CEO), Linus Lee (Cofounder) and Silvanus Lee (Cofounder)
直近の調達額: 600万USドル(6億円)
投資家: Temasek and Sequoia India
設立:2018年9月

<参考>